再会
(10年、経ったんだなぁ。)
あの場所は、10年前と何も変わってはいなかった。
8年前の噂通りに、いったん工事が始まったものの、すぐに中止になったらしく、僕たちのあの場所はそのままで残っている。
(ねぇ、もし・・・・)
道をゆっくりと辿り、右手に続く塀に映る自分の影を眺めながら、僕はとりとめもない事を考え続ける。
(もしあの夜に、僕が一緒にここへ来ていたなら・・・・)
もう何度も考えて、未だに答えが出せない問い。
答えなど、出るわけないのに。
時間は誰にも戻せない。
答えはもう、出てしまっているのだから。
それでも、やっぱり考えずにはいられない。
(もし僕が、約束通りにあの場所に行っていたのなら・・・・)
やがて塀が終わり、目に映る懐かしいあの場所。
「あ・・・」
線路脇に佇む、小さな影。
知っている。
その髪の色、その細い腕、その華奢な体。
1日たりとも忘れた事などなかった、僕の中の・・・・
『来てくれたんだね。』
振り返った君は、嬉しそうな笑顔を浮かべて僕を迎えてくれた。
「うん、来たよ。」
大股で歩み寄り、僕も線路脇に並んで経つ。
あの頃殆ど変わらなかった君の背は、今はもう僕のウエストのあたりまでしかない。
その場にしゃがみ、目線を合わせて、僕は持ってきたシャベルを取り出した。
「じゃ、掘るよ?」
『うん!』
ザクザクと小気味よい音を立てながら土を掘り返していく僕の手を、君は真剣に見つめている。
やがて、手に伝わる固い感触。
シャベルを置き、素手で土をかき分けると、中からくすんだ缶の箱が姿を見せた。
「何だか、楽しみだな。」
笑いかけると、君は、穏やかに微笑んだままで軽く頷いただけ。
まるで、子供の頃に戻ったかのような興奮を覚え、僕はゆっくりと缶の蓋を開けた。
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