*Short story♪ その後の二人(臣と里桜)

 昨夜の飲み会では、ちょっとしたハプニングがあった。

 里桜の奴、ウーロン茶とウーロンハイを間違えて飲んでしまったんだ。

 お酒が弱いとは言っていたけれど、あんなことになるとは予想外……いや、予想の範囲内か。


 真っ赤な顔になった里桜。気分が悪くないかなと心配して覗き込んだ俺の頬をいきなりぷにっと触ってきた。しかも人差し指で、両手で。

 そして、ふにぁっと幸せそうに笑うと、

「柔らかいです~。じんさんのほっぺぷにぷに~♪」 


 もちろん、そばにいたみんな、びっくりして会話が止まる。


「えっと、里桜。大丈夫? 気分は?」

「気分ですか~。最高です~。でもじんさんがいたら、どこでもなんすけね~」


 大丈夫だろうか。呂律まで回らなくなってきたぞ。


 そうして、しばらく陽気にしゃべくっていたと思ったら、いきなりパタリと聞こえなくなった。やばい! と慌てて仰向かせれば、すぴーすぴーと寝息が聞こえてきたので、ほっと胸を撫でおろす。

 さーやさんが濡れタオルを里桜の首筋にあててくれた。別に苦しそうでもないから、体調は大丈夫だろうとのこと。結局おんぶしてマンションまで送り届けた。

 まあ、今はもうここから出勤しても大丈夫なんだけどね。



 里桜の部屋に、俺の物が少しずつ増えていく。

 歯ブラシ、髭剃り、マグカップ、お気に入りのシャンプーやクリーム。

 そして、着替えも。スーツも含めて。


 里桜の落ち着いたナチュラルカラーの空間に、俺の色が増え始めて、最初はちょっと違和感を感じた。なんか、女の子の部屋じゃなくなってしまうな。

 でも、里桜のインテリアセンスはなかなかのもんだぜ。

 俺のダークカラーのスーツには、淡いイエローカラーの布を埃よけにかけてくれたり、小物類は可愛い収納ケースに入れてくれたり。それだけで、一気に女の子の部屋に戻るんだよな。

 

 実は気づいたことがもう一つ。


 『ブラシササエルスキー』って言う歯ブラシホルダーを使っているんだけれどさ。そのスミスキー君の顔と歯ブラシの毛先が、毎回俺のと里桜のが向き合ってセットされているんだよね。 

 最初は偶然だろうと思っていたんだけどね。毎回毎回、綺麗に揃えられていて、これは偶然じゃないなと。

 で、洗面所に行った里桜の後をこそっとついて行って覗いてみたんだ。

 案の定、里桜が嬉しそうな顔して並べていたよ。おかしくて笑いそうになったけど、必死で飲み込んだ。

 こんなことにも楽しみを見つけちゃう里桜は、やっぱり可愛いな。


 でもさ、Gの付くものにだけは、めちゃくちゃ厳しいんだよな。

 

 この間トイレで発見したらしく呼ばれたんだ。

「じんさん、じんさん、ちょっとすみません。そこの棚の下の殺虫剤取っていただけますか?」

「これか。はい」

 里桜、鋭いかどうかは定かでない視線を、Gから片時も離さずに手を差し出してきた。その手に殺虫剤を握らせるや否や、華麗なスプレーさばきで、Gへ向かって噴射した。

「いっけー! ゴキちゃん、覚悟しなさい!」

 

 いや、その掛け声はやっぱゆるゆるか。

 へっぴり腰で、Gに翻弄されて踊っているしね。

 

 え? なんで代わりに退治してやらないのかって?


 だって、里桜がやる気になっているのに、わざわざ手を出す必要もないだろう。

 子どもの頃に顔に飛び掛かられそうになって、それがトラウマで苦手なんてことは、誰も言ってないぜ。ゲホゲホ。


 そんなこんなで、今日も俺たちは『最高に幸せ』を更新中。



            おしまい!



☆感謝 臣と里桜の同居生活の様子をリクエストしていただきました☆

 

 和希様より

『もうお付き合いすることになったので、読んでみたいとすれば、同居して新たな発見をする等でしょうか』コメントより抜粋。

 

 和希様 素敵なアイデアをありがとうございました!


 本編ではのんびり過ぎて同居まで辿り着けなかった臣と里桜。ここで一気に! 進むわけも無く(笑) 相変わらず、まだ同居生活までは辿りついておりませんが、少しずつ、臣が里桜の部屋へ泊って一緒に出勤なんて日々が増えてきたところを描いてみました。


 和希様の作品を紹介させていただきます♬


『スモール・ステップ』

 大学進学のために一人暮らしを始めた松本律君は、パンデミックのせいで学校が閉鎖、一人で孤独なスタートを切ることになってしまいました。それでも初めての土地で知り合いを作りたいと、SNSを通じて「綾」と名乗る、同じ大学で地元出身の女性と知り合います。会話を交わすうちに惹かれていく二人。でも「綾」さんには秘密があって……

 題名の『スモール・ステップ』の意味に気づいた時、あなたもきっと優しい気持ちに包まれると思います。  

 心温まるピュアな恋、お勧めです。

   ↓

https://kakuyomu.jp/works/16816700426207943907




【作者より御礼申し上げます】


 長い長い物語、ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。

 初のラブコメで、四苦八苦しておりましたが、皆様からの温かい応援に励まされて、なんとかここまで書き続けることができました。ようやく完結です。

 感謝の気持ちでいっぱいです! ありがとうございました。

 寒くなってきております。皆様お体に気をつけてお過ごしくださいませ。

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僕たちの恋は不器用だけど愛おしい 涼月 @piyotama

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