羊
私は、雪を編んでいた。
誰かが私のもとに近づいては離れていく。
それはホタルノヒカリのように。
あぁ、愛してあげよう。
誰かを愛することは私を愛することなのだ。
孤独は嫌いじゃない。
親しく話すのも嫌いじゃない。
時を過ごすこと。
何かを繋げていくこと。
生きていることは無駄ではない。
また誰かがやってくる。
黒服。
誰かを悼んでいる。
「一人の、男が此処にきませんでしたか」
低い声。
黒服は影の中から音を出す。
光などいらないように。
「偶に誰かは来ますよ」
「生命の在処を求めているやつです」
あのひとのことだろうか。心当たりはある。
ちょっと前に私を愛してくれた人。
しかし。このヒトは何故探すのだろうか。
「何故、貴方は探しているのですか」
「私の愛を彼は潰したから。復讐ですよ」
黒服の目を見る。
血走っている。
私は彼を守りたい。
私は口をつぐむ。
黒服は黙る。
黒服は首を縦に振る。
「サイレントマジョリティ」
いつのまにか黒服は消える。
影に、存在を奪われたのか。
本当のところはわからない。
羊になる。
僕は羊になる。
羊として人の夜を過ごす。
もう何もない。
ただ時間を過ごす。
死ぬ。
消失する。
世界の奥底から声が聞こえる。
私を救って。
誰かを救って。
生命を見捨てないで。
僕は、どうなんだろうか。
ぼこぼこ。
生命が騒いでいる。
自分の選択は誤っていないかと。
わからない。
僕は。
照れている。
怠惰。
うん。
うん。
うん。
ECHO 容原静 @katachi0
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