4話 魔道具屋と魔王


 食事も終え支払いを済ませると次のオススメのお店にいくことした、フクロウ薬局を出る時に入り口まで見送ってくれたソラスからある物を貰った。

 木でできた小さな黒いフクロウの彫刻だった、なんともいえぬのんびりとした表情が可愛らしい。

 私はお礼をいうと、彼はまたお店に来てくださいねと笑っていた。


 薬局を後にすると、次に行くお店はリムのオススメのお店らしい。

 リムは嬉しそうに尻尾を振りながらウキウキしている、人々が行き交う賑やかな通路を歩いていくと目的地を見つけたのかリムが突然走り出した。


「アリス様ー! こちらですーー!」


 満面の笑みでリムが手を振っている、その後ろに古めかしいお店があった。

 建物の前には箒やガラス瓶など色んな雑貨が置いてある、雑貨屋さんなのだろうかとおもいつつ周りを見て回る。

 薬局の時とは違い人の出入りは多いようだ、人気のお店なのだろうと思いながら看板を見つけた。

 看板には『狐の魔道具屋』と書かれている。


「魔道具って収納箱とかの?」

「そうです! 私がオススメしたいこの狐の魔道具屋は主に生活雑貨や鑑賞向きの雑貨とかが多いんです! アリス様も興味が尽きないものが多いかなって!」


 魔道具の専門のお店、私がいた世界では到底みることができないものの専門店それは是非とも見てみたいと私は目を輝かせていた。

 ふと店の前にある陳列窓に人々が興味深そうにみているのが目に入った、何をみているのか気になった私はそちらに向かう。

 間からこっそりと眺めるとそこには綺麗な水の入ったガラスの箱が置いてある、中をみるとなんと小さな魚が泳いでいるのが見えた。

 魚だけでなく海藻や珊瑚礁などもありそしてどれも全て小さい。


「二人ともあれはなんなの?」

「あれは収納箱の新作だな」

「収納箱の? そういえば生物も入れられるって言ってたものね!」

「こちらは・・・・・・えっと、その入った生物を鑑賞できるタイプってことですね、説明によると海や森、砂漠など各種の環境に対応していますって書いてありますね」


 私はあまりの凄さに興奮を隠しきれなかった、こんなに面白そうな珍しい物を体験できるなんて!

 つまり、この中のお店の商品も全て魔法で加工された道具達、初めてきた専門店で新商品の凄さを体感しつつ私達はお店の中に入っていった。



***



 お店の中はまさしく好奇心が疼く宝庫だった、魔道具屋のは丁寧に陳列された商品がたくさん置いてある。

 魔法で加工され汚れが落ちやすい石鹸や洗剤、刃こぼれや錆ができない包丁や果物ナイフ、保温や保冷に特化したポットやコップなど私の知っている生活雑貨にさらに魔法でもっと便利に加工されているものが並んでいる。

 実際に使われている様子を見れるようでガラスケースに魔法で動いている箒や泡立った石鹸などいろんなものが紹介されている。

 好奇心が疼いて仕方がない、目移りしそうなその光景に興奮している私の様子をアイニとリムはにっこり笑って眺めていた。

 お客さんも賑わっているようだ、男女どちらも多く商品をみて悩んでいたりこれにしようと相談していたりと人気さが伺える。


「フクロウ薬局とは全然違うくらい人が多いのね・・・・・・」

「そりゃそうさ、ソラスの所は基本的に個人のお客さん重視でやってるからな、人があんまりいなかったのは・・・・・・まぁあれだったからな」


 アイニが濁した言葉に私はハッとした、あぁそうかあのごちゃごちゃした感は確かに新規は入りにくいよね・・・・・・。

 そう思いながら私は何も言わず苦笑いだけしていた。


「逆にこの魔道具屋は集客に力を入れているから人の多さはすごいぜ? 人気商品や最新の商品なんかもすぐ入ってくるからこんなに人が多いのさ」


 なるほど、確かに人は多く感じる商品も新商品や当店人気商品と張り紙が貼り付けられていたり、商品の簡単な説明もわかりやすくて助かる。

 

「ここのお店は、魔王様直属のお店ですからそれも影響していると思いますね」

「えっ!?魔王!?」

「そう、魔王。 ここはマモン様が運営してるとこの店だからなあの方は商売が上手いっていうか金銭扱うのめっちゃ上手いんだよ」

「魔王がお店をやってるってなんかびっくりしちゃう」

「ハハハ、まぁ商売やってる魔王は数人しかいないからな」


 それでも商売をやってる魔王が数人もいるのか・・・・・・本当になんでもやってるんだなぁと思ってしまった。

 

 マモンは魔王の中でも強欲を司る王なのだという、その欲望は金銭や富を中心としたものでその影響でこういった商売を当然のようにするようになった。

 影響力はもちろん強く魔界をはじめ地獄や私のいる世界にも進出していっているのだという。

 私のいる世界では基本的に魔道具は売れないので百貨店のような色んな物を売っているお店を運営しているそうだ。

 どんな名前でやっているのかと聞くと、その名前はどこか聞いたことのある名前でそんなに身近にまで進出しているのかと驚いた。

 そういえば、神様の世界には進出していないのだろうかと思い聞いてみると、一応進出はしていたりするそうだが基本的にマモンの意思として神様側には近寄りたくないらしい。

 神様にこっ酷く懲らしめられたためと聞いてどんなことをやったのか・・・・・・悪魔だからきっととんでもないことをしたんだろうなと想像してしまった。


 魔王マモンの説明を簡単に教えてもらう頃にはお店の中央あたりにまで進んでいた、よくよく考えるとお店の外見の割に中が広く感じるので、フェネクスの図書館と同様の効果を持った建物なのだろう。

 中央には陳列窓にあったガラスの箱がたくさん置いてあった、おそらくここが新商品が集中して置いてある場所なのだろう。

 人の賑わいも多く明らかにここ目当てで来ている客も見える、皆和気藹々と選んだり手に取って悩んでいたりしている。

 私も好奇心に負けその箱に近付いて行こうとした時だった、ドンと商品の影から誰かがぶつかってきた私は思わず反動で転びそうになった。


「おっと失礼、よそ見をしていました申し訳ない」

「いえ、こちらこそすいません私もよそ見をしていたので・・・・・・」

「お怪我は内容ですね?」

「はい、大丈夫です!」


 転びそうになった時、咄嗟に私の腕を掴んで転ぶのを防いでくれたようだ。

 ぶつかった相手は黒い帽子とおしゃれなコートをきた男性だった、よくみると耳が生えている、獣人の人なのだろうか?

 

(アイニみたいな悪魔の人なのかな?)


「アリス! 大丈夫か!?」

「あ、アイニ! うん私もよそ見しちゃってて・・・・・・転びそうになった所を助けてもらったの」

「いやそうじゃなくて・・・・・・!」


 アイニは何か焦っているようだ、後からきたリムは不思議そうに焦っているアイニをみている。

 

「実に興味深いですね」

「えっ? 何が・・・・・・」

「この腕輪・・・・・・あぁそうか君・・・・・・」

「?」

「いえ、今日は我慢しましょう。 時間がありますのでまた今度、ゆっくりおしゃべりしましょうお嬢さん?」

「はい・・・・・・えっ?」


 男性はにっこりと笑い会釈するとそのまま足早に店の出口まで進んでいった。

 私はあっけに取られていると、アイニが心配そうに私の方に近寄ってきた。


「アリス大丈夫か?」

「うん、大丈夫・・・・・・でもあの人何だったのかな?」

「そうですね、そそくさと行っちゃいましたし」


 変な人ではあったが最初のツァーカブの入り口前にあったホブゴブリンのようなあの時のような嫌な感覚はなかった。

 一体何をしたかったのか分からなかった、本当にあっという間の出来事だった。

 

「・・・・・・さっき話してただろ? っていうかそうかリムもしかして本人にあったこと無かったのか」

「? さっきってもしかしてマモンっていう魔王の話?」

「そう、さっきの人」


 理解できるまで数秒かかった、私とリムは目を見開いて驚きの声をあげてしまった。


 

 

 


 


 

 

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Devil in Wonderland 伯耆 @basan0w0

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