青と赤
目に映ったのは、ガラスを隔てた向こう。図書室らしき部屋に、青い布のような浮遊物が見えた。揺らいで、蠢く、第一印象がタコのような何か。
少女が身を低くしたので、飛び退くんだと察した僕は一緒に飛び退いた。物陰に隠れたおかげか、青いヤツは気付かず、そのまま意識の外へ消えた。
あれに近付いていたらどうなってたか、それはちょっと、考えたくない。多分考えるのも危ない、からもう忘れる。
幾つかの気配を感じてみれば、ふくよかなクラスメイトの姿が見えた。頭が無い、代わりに赤いパーティクルが舞っている。血では無いが、恐らくメタファー。ただ、それは事も無しに歩いている。
ここは異形が暮らす世界なんだ。青いのも赤いのも、それは個性の範疇で、暗闇を抜けられた先に赦された色だ。今にして思えば、僕も何か色を得られたのか。それは恐らく、気にするべくもない事で、自分の姿なんて見えなくても良いんだと考える。ただ思い出すのは、青い布のタコも、赤いパーティクルのクラスメイトも、綺麗だったこと。
朧な顔の委員がいたので、その人の立つ窓口に向かう。話をしてみるが、交わす言葉はその場で忘れ、何を思ってここに立っているのかも分からなくなってしまった。目覚めが近いんだ。そう言えば、あの少女は何処にいったのか、もう気にも留めなくなっている。
始めに彼女を連れていなければどうなっていたんだろう。青いタコに捕まっていた? それとも暗闇が永遠になっていた? もう確かめようも無い。ただあの光は、暗闇の中で僕を支えていた。
今も何処かでランタンを吊るしているか、いや幸福な場所にいてくれたら嬉しいとだけ思おう。夢の中で、僕は彼女を好いていた。
忘却が殺害でないことを祈る。
以上が、僕が忘れる事の出来なかった異界の記録と、それに伴う心の観測と推測。
最後に名前を付けて、あの場所を異世界へと昇華する。
命名
異界名録 ~夢の歩み~ 転醒 廻実 @tensei_kurumi
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