#01XX 美味しい朝ご飯を

#01XX「美味しい朝ご飯を」


 私のお母さんが作った朝ご飯を、寮生たちが美味しそうに食べている。

 それと一緒に、アキラも私も朝ご飯を食べるのが日課だ。


「はい、いただきます」

「いただきます」


 朝食のメニューは、ご飯にふりかけ、野菜たっぷりのお味噌汁、目玉焼きとサラダと厚切りハム。お好みで納豆も食べることができる。アキラは、食べない派だ。

 そして、目玉焼きには――。


「はい、お醤油」

「うん、ありがとう」


 私はアキラの幼馴染なので、当然、好みを把握している。そのほかにも、アキラが今欲しいものが手に取るように分かるのだ。


「はい、麦茶」

「あぁ、ありがとう」


 うん。今日も調子がいいみたい。


「ふふふっ」

「なに笑ってるんだよ、早く食べないと遅刻するぞ?」

「大丈夫―大丈夫ー」


 こんな朝が、ずっと続けられたらいいなぁって……私は思うのです。

 でも、朝ご飯の時間はこれで終わり。


「大丈夫って言ってたけど、結局遅刻しそうじゃないか」

「いやいやまだ大丈夫! 走れば間に合うって!」


 私が言った「大丈夫ー」という返事とは裏腹。

 私とアキラは走りながら学園へ向かっていた。

 住宅地の合間を走り抜ける。道中には、交差点がいくつもあって少し注意する必要があるのだ。なぜなら、謎の女の子がパンを咥えて、アキラとぶつかりそうになるからだ!


「うわ!!」

「きゃっ!」


 ほらね? でも私は、それもお見通し。

 ぶつかりそうになるアキラの襟首を掴み、「おぎゃっ!?」という声を上げさせながらも、急停止させる。さらに、女の子に怪我があると、アキラが気になってしまうかもしれないので、倒れそうになる女の子も助けましょう。

 姿勢を崩した女の子の正面に飛び出す。左腕で女の子の身体を抱えて、右手は女の子の手を握りしめ、私たちは身体を反らし回転しながら、倒れそうな姿勢を徐々に戻していく。

 アキラから見れば、私が女の子をダンスでリードするように立て直して見えたことでしょう。

 ああ、忘れちゃいけない。

 女の子が咥えていたパンがまだ宙に舞っている。

 私は、そのパンをキャッチして、女の子の口にそっと戻してあげた。

 これで――


「大丈夫」

「おおっ! すごいぞ、カエデ!」


 アキラは目を輝かせて、私に拍手を送っていた。

 女の子の方を見ると、明らかに悔しそうな表情で顔を歪ませて、私たちと同じ学園の方へと走り去ってしまう。


「あ、君!」

「いいよ、アキラ。呼び止めなくても」

「でも、せっかく助けたのに……カエデが」

「お礼を言われるためにやったわけじゃないから」

「そうか?」


 私は、平静を装った。だが、私の心臓はドキドキバクバク身体中に心音を轟かせていた。

 急激な速度で二人の衝突を回避させたことが原因の一つではあるが、それだけではない。


(もし、アキラが他の女の子と運命的な出会いをしてしまったらどうしよう……)


 そう思うと私は不安で、心臓が悲鳴を上げるのだ。

 ちらりとアキラの様子を確認し、どうやらその心配は無さそうだと判断する。

 そうすると、心音も少し落ち着いてきた。


「って、俺たちも遅刻しそうなんだ!」

「……そうね! 急ぎましょう!」

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