【Free Desire Online】~ゲームの実績が現実のお金に⁉だけどログアウト不可のデスゲームです。とりあえずいきなり大博打してみる~

山畑 京助

第0話 デスゲーム? とりあえず1発賭けるか!



――20□▽年 8月1日



 この日、ゲーム史どころか世界史にも残るであろうゲームが発売された。


 そのゲームのタイトルは【Free Desire Online】


 『フリー・ディザイア・オンライン』と読まれるこのゲームは流行りのVRMMOとは一線を画すシステムが1つある。


 ゲーム内での様々な実績で得たポイントを現実でお金に換金することが出来るというシステム。

 発売前の情報ではLvを30まで上げるだけで日本円で10万円獲得出来るという信じられないような情報だった。


 ダイブ型VRMMOである【Free Desire Online】は世界中で予約の嵐となり、多くの人が発売日にプレイ出来ないと思われたのだが、公式声明で予約した人も全員すぐプレイを確約と、当日販売も多くの台数を店頭に出すと言う発表だった。


 完全なダイブ型VRMMOである【Free Desire Online】だったが驚くほどの少額で販売されて世界の度肝を抜い上で確実に手に入るという情報に世界は疑ったが、その疑いも晴れることになる。


 解禁されるプレイ映像はそれまで販売されたゲームを完全に過去のものにし、選ばれた多くのテストプレイヤーからの絶賛の声、現実世界と同じような時間速度に感じるが実際はゲームの5時間は現実では1時間と言う謎のシステム。


 実際予約したほとんどの人がゲーム開始1週間以上前に届き、開始時間までゆっくりと準備することが出来ている状況だったのだ。



 都内のとあるマンションでジャージ姿でウキウキしながら説明書を読む男の姿があった。

 男の名は「秋川蓮司あきかわ れんじ」近くのとある大学の1年生。マンション近くの牛丼屋でバイトをしていたが【Free Desire Online】を手に入れてすぐバイトをやめ、ゲーム開始1時間前となった今、完全武装で待機中だ。


 少しボサボサになった黒髪を搔きながら3回目の説明書を読んでいる。



「こんだけ予習すればスタートダッシュは余裕だろう」



 発売前の段階でLv30にすれば10万手に入るのは分かっている。

 【Free Desire Online】での実績はゲーム内の特定施設でポイントを確認出来るシステムで特定の魔物や魔王と呼ばれるボスの討伐は早い者勝ちとなっている。



「どうやって最速Lv上げとボス狩りを出来るかが勝負だな」



 無数にあるジョブや装備、アビリティにスキルの中からどうやって他の人を出し抜けるようにしていくのか。

 このことを考える番組が地上波でやっていたほど世界中の人間が考えている。



「でも行ける気がするんだよな~」



 蓮司は他のプレイヤー全員を出し抜いて進める自信があった。

 昔から運が良い。

 蓮司は気付いた時には「運が良かったな」と日々思うような生活をしていた。宝くじで当たったとか、競馬で大儲けしたっていう実績があるわけではないが、運で様々なことを切り抜けていくうちに自分は運が良い人間と思うようになっていたのだ。



「いつも通りなんとなく行ける気がする」



 引きこもる準備は完璧だ。

 衣食住を当分の間、外に出ずとも維持できるようにカスタマイズはしてある。

 バイトもやめたし、レポートも済ませてある。

 蓮司は自身が出来る最高の準備をしたと自負している。



「もう一回トイレ行っておこう」



 時間が近づくにつれて、ほんの少しの尿意も気になるようになってきて、この2時間で6回目のトイレへ行くことにした。


 

 そこからは何度も心配になることの確認するというまさしく落ち着かない人間の行動を繰り返していた。

 このゲームで人生楽勝コースを目指している蓮司は、人生で1番の緊張をしていると言っても過言ではないのだ。


 そしてゲーム開始時間になる。

 蓮司は買い替えた新しいベッドに横になりながら指定のヘルメットを装着してスイッチを入れた。



「行くぜ! これで俺も億万長者だぁ!」



 その瞬間、世界は暗転した。









『こんにちわ』



 目をあけたら綺麗な金髪美人系姉ちゃんがいた。

 周囲を見たら真っ白な空間が広がってる。それに俺、宇宙空間にいるみたいに浮かび上がってる! すごいな!



「こんにちわ!」


『元気がいいですね。キャラクターネームを決めてください』


「アキ・レンジ!」



 他のゲームでも使っているキャラクターネームで行く。

 こうすればもしかしたら知り合いと遭遇してゲームを優位に進めれるかもしれない。



『アバターは自動設定になります』


「あれ? 決めれるって書いてなかったか?」



 俺の身体は何も変化することなく。そのまま浮かんでいる。

 目の前の姉ちゃんは微笑んだまま俺を見ている。まぁ金さえ稼げればまぁいいか。



『メインジョブとセカンドジョブを決めてください』


「ここが大事だな」



 俺の目の前にモニターが出現する。

 そこに表示される大量のジョブ名。

 基本メインジョブで戦うことになる。ステータスはメインジョブが反映されるみたいなのでじっくり選んでいきたい。

 セカンドジョブはアビリティやスキルを覚えれるので、メインジョブのステータスに合ったようなものを選ぶか、いっそのこと真逆だったり補助系ってのが良いってネットに書いてあったな。


 画面をスクロールして見ていくと面白そうなジョブを見つける。



『ギャンブラー:アナタの運とテクニック次第で全てを掴める!』


「メインジョブはこれだろ!」



 全てを掴めるってわざわざ書いてあるんだもんな。

 幸運のステータスが強いらしいからセカンドジョブは幸運が高い感じの役に立つジョブにしないとな。

 それにしても数が多すぎるな、これを決めるのに1日かかるんじゃないのか?

 戦闘で強そうなジョブを探していたが面倒になってきたので自分に出来そうなジョブを選択する。



『武闘家:君の拳で世界を開け! 信じられるのは己の体のみ!』



 よし! これでいこう!

 ギャンブラーの幸運値を存分に活かしたクリティカル狙いの武闘家ルートだ!



『ボーナスポイントをステータスに割り振ってください』



 自分のステータスがモニターに表示される。

 とりあえず幸運値に全部のボーナスポイントを振り込む。

 こういうのは特化型が強いって話を聞いたぞ! そして特化型にすると目立って美人がたくさん仲間になるともネットに乗っていたからな! 完璧な予習だ!


 それに幸運値はアイテム発見率にも繋がるらしいから、俺だけレアアイテムを発見してさらに美女にモテモテだな!!


 とりあえず自分のステータスをじっくり確認してみる。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【アキ・レンジ】 人間族 男性  年齢18歳  Lv5

        メインジョブ  【ギャンブラー】

        セカンドジョブ 【武闘家】

       HP 80+5  MP 60  

       攻撃力 16  防御力 10

 ステータス 体力 4  物理攻 6+2  物理防 4+1

       魔力 3  敏捷 5+1  幸運 13+5

 

 アビリティ ・ギャンブラーの心得 G   ・自身の幸運値が+2される。

       ・武闘家の心得 G     ・自身の物理攻が+2される。

                     ・自身の武技威力が1.1倍される。


 スキル   ・ギャンブル技法 G  

・Gランク以下のギャンブル技法が使用できる。


       ・アルティメット・ルーセット S

・当たれば世界が変わる! なんでも賭けれるアルティメット・ルーレットが使用できる。


       ・格闘技法 G  

・Gランク以下の格闘技法が使用できる。


装備

武器     ・幸運のグローブ  ・攻撃力+1 幸運+1

防具     ・布の服      ・防御力+1 HP+5

       ・布のズボン    ・防御力+1 物理防+1

       ・運動靴      ・防御力+1 敏捷+1

アクセサリー ・クローバーの指輪 ・幸運+2 


 割り振りポイント 残り 0 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 

 かなりステータスが細かいな!

 そしてアルティメット・ルーレットってのが気になりすぎる。

 ゲームが本格的に始まったらさっそく使ってみたい技だな。


 装備も細かく部位ごとに別れているらしく、初期装備はヤバいけどあるだけ増しだと思っておこう。

 アクセサリーで幸運値がかなり上がってるのはありがたい。



『ステータス等についての説明は必要ですか?』


「いらない」


『初期は聖国に行くことになりますが、1度だけ好きな4代国家に跳ぶことが出来ますどこにしますか?』



 これは初期時期をどこで進めるかって話か。

 事前情報では受けられるクエストも生息する魔物やダンジョンなんかも全然違うらしいが差異は無いらしい。

 国ごとに特徴はあるらしいが全部説明を読むのが面倒なので帝国を選択する。



『帝国ですね。わかりました』


「さぁそろそろだな」


『ログインボーナスで50000ゴールドプレゼントします』


「5万円ね! ありがとう!」



 5万円あれば色々出来ると書いてあった。

 いきなり豪遊してもいいのかもしれない。食事なんかが大事になってくるとも書いてあったので、街に出たら何がどうなるのかしっかり見てみるのもいいな!

 でもLv上げと攻略もしないといけない! ワクワクすっぞ!



『このゲームで達成された実績は現実世界の現金に換金することができます』


「それが目的です!」


『冒険者ギルドにある。実績ポイントを確認できる場所があるので確認してみてください』


「なるほど、そこにあるのか」



 こうやって説明されると改めて、このゲームが本当に金を稼げる凄いゲームだと感じる。

 もし上手く行けば将来就職なんかしなくても、このゲームで稼いだ金で生きていけるかもしれないし、卒業時期もこねゲームで稼いでいられているかもしれない。


 このゲームの配信者ってのもいいかもな! ログインから5日目以降は配信機能が使えるらしいからな!

 トッププレイヤーになったら配信者としても稼いでぼろ儲けだ!!



『この世界では3つの条件をクリアするまでログアウト不可です』


「…えっ?」


『3つの条件を決めますが、よろしいですか?』


「ま、待ってくれ!」


『ログアウトは不可です。これは変更できません』


「どうなってる!?」



 3つの条件をクリアするまでログアウト出来ないって、ゲームの中に閉じ込められるってことか?

 現実の俺はどうなるんだ? 時間が経って何も出来ずに死んでしまうのか?

 そんなこと書いてなかったぞ? どうなっている?


 とりあえず落ち着いて3つの条件を聞くか、もしかしたら3歩歩くとかだっyたかもしれない。



「ふぅ……3つの条件を教えてくれ」



 モニターに3つの条件が表示される。

 この条件を全部クリアすればログアウト可能になって、他の人に先にクリアされた場合は他の条件に変わる……か。



1.『天風の魔王ラムザ』の討伐  報酬 日本円 8000万円

2.ユニークモンスター『暴れ狂う牛鬼』 報酬 日本円 3000万円

3.レアアイテム『焔竜の牙』の入手  報酬 日本円5000万円



 これはまったく簡単に終わりそうにない条件に見える。

 それにしても報酬の額がぶっ飛んでやがる。

 ログアウト不可のゲームってのは数年前に流行っていた漫画やアニメにあった設定だと思ってたんだけどな。

 そしてもしかしたら、もう1つ設定があったりする予感がする。



『そしてこのゲーム内では、基本的に死んだら現実世界のアナタも死亡しますので、お気を付けください』


「くそ……嘘だろ? 本当にこんなのあるのかよ」



 ログアウト不可のデスゲーム。

 完全に数年前に流行った漫画やアニメの設定と同じだ。

 報酬でプレイヤーを集めて、中ではデスゲームさせるってのが嫌らしくイライラしてくるな。

 でも生き残って条件をクリアさえすれば、かなりの金額が手に入る。


 なんだか行けそうな気がするんだよな。



『随分冷静なのですね』


「ピンチになると根拠はねぇーんだけど、行ける気がしてくるんだよ」


『素晴らしいですね。他のプレイヤーは現在ではほとんど発狂しておりますよ』


「泣いても出れるわけじゃないんだろ?」


『えぇ…その通りです』


「現実の俺はどうなる?」


「間もなく我が使者が保護致しますよ」



 準備万端だったってわけか。

 ここで怒り散らしても意味がないからな。どうせなら賞金ゲットのために急いでログインをして攻略したい。


 今更だが堅実に死なないようにするんだったらギャンブラーになんかするんじゃなかったな…。

 でも俺は剣術とやらの経験も特にないし、いいか!



『「簡易サバイバルセット」「携帯食料×15」をプレゼントします』


「中身は詳しく分からんけど助かるな」



 命がかかってるゲームだからアイテムがいくらあっても困らないだろう。

 クリアさせる気がないとしても絶対にクリアして賞金ゲットしてやるからな。



『最後にプレイヤー共通スキルのプレゼントです』



『女神の加護』目標対象の居場所に一番近い街を示してくれる。獲得経験値が2倍になる。アイテム発見率15%上昇。死んだ時にLvをマイナス40して0より上であれば近くの街で復活できる。メニューの使用が可能になる。


『挑戦者の心』この世界で言語を共通させる。全ステータスが目標をクリアすることに上昇する。病気から身を守り、老いの流れを大幅に遅くする。


『アイテムボックス』プレイヤーのLvで広がる異空間収容スキル。アイテムをいつでも取り出せるし、しまいこめる最高のスキルです。



「生き返るチャンスがあるのか!」


『それでは……自らの欲望を解放させてください』


「賞金は絶対にゲットしてやるからな! それと移動するの面倒だからさっきの1回使って最初っから帝国スタートにしてくれ!」


『わかりました。ようこそ【Free Desire Online】へ』



 再び俺の視界は暗転した。








――クピドゥース帝国 帝都アルカーヌム 中央噴水広場



「これがゲーム?」



 目を開けると、広がっているのは中世のようだけど、現代要素もある街だった。

 大きな噴水があり、人がたくさん歩いている。鎧着ているやついるからゲームだな。

 ちなみに時間は昼過ぎのようだ。

 説明書にメニューのことが書いてあったし、確かマップが視れるはずだ。


 すると脳内で念じたからかマップらしき物が表示される。



「広いし、徒歩かよ」



 こんなにリアルで凄いのに不便なもんだな。

 今どきのゲームはトラベル機能がなきゃいけないってのに、お約束が分かってないなんてな。

 身体の感覚に違和感は無い。それどころかいつも以上に動きそうな気がする。



「マップに表示されている矢印の方向に俺の目標がいるのか」



 ワールドマップは見れないが3つの矢印がそれぞれ違う方向で表示されている。

 報酬金が難易度になってるだろうから簡単なやつからやっていくべきだろうか?


 とりあえず死なないためにも色々やらなきゃな。



「どうせ他のプレイヤーはまだログイン出来てねぇーと呼んで色々やりたいな」



 実績解除のために帝国の街を見て周って見るかな!!

 歩いて行くと1日以上見て周るのにはかかりそうだから、まずは宿だけ探しておかないとな。

 

 俺はマップだよりに宿を見に行く。

 通り過ぎる人たちの会話が凄いリアルだ。みんなそれぞれの話をしっかりしていてテンプレの会話なんてまったく聞こえてこない。

 立派な鎧を着た騎士さんが多いのは帝都ってことだからだろうか?


 こういうのは『鑑定』っていうスキルを用意しておいてくれよ! お決まりじゃないの!?


 そうこうしている内に宿に辿り着いた。

 街の中央から距離があるから安いと思ったんだけどな。

 店の前には中学生くらいの女の子がエプロン着てキョロキョロしていた。


 そして俺と目が合った。



「あ! も、もしよろしければ宿いかがですかー!?」



 かなり緊張してるみたいだけど頑張ってるな。

 よし! 金髪姉ちゃんから貰った金でいけるかな?



「なんて名前の宿なのか教えてくれないか? お嬢ちゃん」


「『土竜の踊り場』と言います! とってもお安いです!」


「丁度いい! 案内してくれないか?」


「ありがとうございます! お母さーん!!」



 女の子は勢いよく宿の中に入っていった。

 俺も後ろをついていく。その中は木造の落ち着いた雰囲気のある宿屋さんだった。 

 1Fは食事場で2Fが部屋っぽいな。

 カウンターみたいなところに女の子と母親らしき人がお辞儀してくれていた。



「いらっしゃいませ。ようこそ『土竜の踊り場』へ」


「いらっしゃいませー!!」


「長期の宿泊予約とかって出来ます?」


「お母さん! 長期だって!!」


「エリサ! 声が大きいわ。ごめんなさいね煩い子で」


「元気でいいと思いますよ! いい看板娘ちゃんだ」


「長期のご予約ですね。説明致します」



 宿の説明をしてもらった。

 なんと2万で30日間朝飯つきで泊まれるらしいぞ! 井戸の水は朝晩の指定時間で使い放題らしく、部屋の掃除なんかもしてもらえる。

 そしてなんと毎朝水筒をもらえるようだ! 壊したりしたら罰金だが、ちゃんとしてれば毎日貰える大サービス!



「いいね! じゃぁ30日間お願いします!」


「「ありがとうございます!!」」



 2万ゴールドを支払う。

 しっかり腰についていたポーチからお金を出す。

 これで30日はここを拠点にして活動することが出来るな。

 

 それにしてもゲームとは思えんようなリアルさがあるな!

 宿屋の部屋は至ってシンプルだが文句は言えない。



「冒険者ギルドにでも行ってみるか」


 

 まだプレイヤーが少なそうな今がチャンスだ。

 俺は宿を出て徒歩で冒険者ギルドへと向かった。







――帝都 冒険者ギルド 




「そんなに煩くねーな」



 冒険者ギルドってのは発売前の情報で内装が公開されてたから知ってたけど、実際入ってみると違うもんだった。

 15時っていう時間の影響か思ったより人がいない。

 受付嬢っていう女性たちがカウンターに並んでいて、みんな美人!


 そしてチラホラ見える、俺と同じプレイヤーって感じの人。


 ちなみに運営側の配慮か冒険者ギルドへは初めから所属していることになっているらしい。一斉に受付に並ばれるのを防ぐためみたいだな。



「これがクエストってやつか…」



 壁に大量に張り出されている紙に内容が書いてある。

 Aランク以上のクエストは紙ではなく受付嬢から聞けるシステムだそうだ。

 魔物の討伐から護衛、雑用にアイテム採取など色々ある。



「さすがに今の時間から行くのは危ないな」



 他のやつに声をかけられると面倒なことになるって漫画とアニメで学んでいる俺はギルドを後にして、宿が閉まるまでの時間を帝都の見回りをすることにした。


 アイテムや武器を見たが、現在の所持金では大したものは買えそうにないので見るだけにして宿に戻ることにした。









――帝都アルカーヌム 『土竜の踊り場』



「アルティメット・ルーレットか…」



 『アルティメット・ルーレット』自身の所持している物を賭けて豪華賞品を獲得できるチャンスを得るスキル。賭けたものが現状の自分に対してどれだけ大事なものかで、獲得することが出来る商品の質が変わる。全ての物を賭ければ奇跡が!



「面白いスキルじゃんか!」



 『土竜の踊り場』に戻ってきた俺は部屋でスキルの効果をメニュー画面で確認している。

 ギャンブラーが最初から覚えている『アルティメット・ルーレット』の説明を呼んで、思わず叫び声をあげてしまう。

 

 これってよくある「いきなりチート」ってやつだろ! 

 いきなり最強ランクの武器とかスキルをゲットして無双するのは流行ってた流れだ!

 これで得た力で稼ぎまくって美女とも仲良くなれる! 完全に世界にヒーローになれる!



「所持金・アイテム・装備品か…やるなら全賭けだろ」



 こういうのは怖気づいたら負け! 賭けるの大事さなら終盤よりも序盤のほうが使いやすいスキルになってる。

 今の俺からすれば雑魚装備も重要品。所持金3万も全財産でもらったアイテムも生命線だ。


 100%のはずだ。そして俺はこういう時は上手く行ってきた男だ!

 

 スキルを使用すると、目の前に巨大なルーレットが現れる。矢印の先には今のところどのマスも何も書いていない。

 俺は次々とアイテムを選択して賭けていく。


 装備も所持金もアイテムも全賭けだ!

 巨大なルーレットに重要度100%と表示されている!



「なんだかゾーンに入ってるな」



 神経が研ぎ澄まされている気がする。

 すごく集中していて、なんでも出来そうな気がする。


 少し待つと獲得候補が表示されていく。20マスのルーレットにそれぞれ違う商品が現れる。

 こんだけ賭けて獲得できる商品はマス1つ分ってヤバいけど仕方ない!

 

 とりあえずどんなもんがあるか見てみるか?



「一番外れは何も無しってヤバいな。15個くらいは外れか」



 20個のマスの内、15個は外れのようで残り5つはよく分からないけど強いってのは分かる内容となっている。

 ワクワクしてくるな!



「伝説のギャンブラー装備一式、5000万ゴールド、永遠ご飯セット…やべーな!」



 確実にチートになれるチャンスが来てる。

 1度深呼吸をしてから回すタイミングをはかる。



「今だ!!」


『アルティメット・ルーレットを開始します』



 ルーレットが回る。

 後は祈るだけだ。これで俺のデスゲーム人生が決まる。

 明日から英雄になれるかどうかが『アルティメット・ルーレット』によって決められる!

 さぁ! 俺をこの【Free Desire Online】の英雄にしてくれ!


 ルーセットがゆっくりと減速する。


 汗が止まらない。ドキドキが半端ない。


 矢印が完全に止まる。






『獲得商品が決定しました。おめでとうございます! 100ゴールドの獲得です』


「と゛お゛し゛て゛た゛よ゛お゛お゛お゛!」



 こうして欲望に塗れたプレイヤーが1人、【Free Desire Online】の闇に飲み込まれていった。

 


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