第9章

太陽は高く登り俺の頭を真上から熱してきていた。今日はかなり暑い。


だがしかし桜ヶ原に向かう俺の足取りはいつになく軽かった。


それもそのはず、なんたって今から小野小町に会うのだから。


今朝の俺はだいぶ浮かれていた。


小野小町ウケの良い服がどれかなんて考えるのは間違いなく

地球上の現代人でただ一人だ。


着物については千代さんが近所の人から譲り受けたものを何着かもらっていた。


ぶっちゃけいうと生地は安っぽいし穴やほつれもあるが養ってもらってる身のため

偉そうなことは言えない。俺はその中で発色の良い藍色の着物に袖を通した。


場面を戻そう。そろそろ俺は桜ヶ丘につく。約束の場所は昨日彼女と出会ったあの桜の大木の下だ。


時間は影が一番短くなる時とのこと。なんてロマンチックな言い方なんだ。


いけない、いけない。つい惚気けてしまった。今の俺だいぶキモかったな。


桜の大木の下についた。良かった、まだ彼女は来ていないようだ。


待ち始めてから5分ほど立っただろうか。


ぼーっとしていると背中の方から声が聞こえた。


「おまたせ。」


俺は声につられ振り向いた。


小町は昨日よりラフで動きやすそうな着物を着ていた。


彼女は若干肩で息をしていた。急いで会いにきてくれたのだろうか。


「あ、こ、こんにちは。き、昨日ぶりだね、ハハ。」


しまった。心の準備が足りていなかったようだ。キョドってしまった。


「ちょっと、そんなよそよそしい反応しないでよ。」


からかうように彼女が笑った。かわいい。


というか彼女の一挙手一投足全てがかわいい。


この思考もかなりキモいが紛れもない事実だから許してほしい。


「昨日はあの後お仕事だったから帰らなきゃならなかったけど、私ちょっとあなたに興味があるの。色々お話しましょ。」


俺は黙ってうなずいた。声を出すつもりだったがキョドらないように気を使いすぎて声にならなかった。


こうして俺がキョドりすぎて半ば取り調べのようなおしゃべりタイムがスタートした。




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俺は1200年越しに小野小町に恋をした。 遠宮ナギ @toumiyanagi

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