第8章
俺はしばらくその場に固まっていた。
これは奇跡と言って良いのだろうか。つい先程まで話していた女性はあの小野小町だというのだ。
俺は俺自身を疑った。きっと聞き間違えただけだろう。
だがもし本当に彼女が小野小町だとしたら現代で想像されているどんな姿よりも美しいことは確かだ。
「俊平兄さん、もう帰ろ。」
小さな手が着物の裾を引っ張った。
少年に声をかけられて俺は我に帰った。
杏樹堂につくと千代さんがすでに夕飯の支度をしていて美味しそうな匂いが家中に立ち込めていた。
「みんな桜ヶ原は楽しめたかな?」
子どもたちに笑顔で問いかけた。
「とっても楽しかったよ!ねぇ俊平さん!」
無邪気に笑う子どもたちを見て俺は保育士もいいな、なんて現代に帰れるわけもないのに未来の自分の姿をのんきに想像していた。
夕飯の時間になった。相変わらず千代さんの料理は絶品だ。
食事中、ふと昼間のことを思い出した俺は千代さんに聞いてみることにした。
「千代さん、あの、小野小町って女性ご存知ですか?」
「もちろん知ってますよ。この町の貴族様のお屋敷にいる宮女の方です。」
本当に小野小町だったのか、でもまだ同姓同名って線もあるよな。
俺は質問を続ける。
「宮女の方ってみんな世間に名が知れてるものなんですか?」
「いえいえ、そういうわけではないですよ。宮女もたくさんいらっしゃるから。
でも彼女は特別ね。なんでもこの町は疎か日本中を探しても彼女に匹敵する者はないほどの美貌らしいわ。それから歌の才能もあるようね。詳しくはわからないけど六歌仙といったかな、すごく有名な歌の達人の一人だそうですよ。」
千代さんのこの話を聞いて俺は確信した。彼女は紛れもなく本物の小野小町だ。
直江俊平、17歳。明日は今日告白&フられた女の子と合う約束をしています。
さっきまではなんともなかったのですがなかなか寝付けません。
とてもワクワクしています。
この気持ちはドキドキと表現したほうが良いのかな、、、、
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