第28話 【ざまあ回】ギルドマスターってのは追い剥ぎの親分かい
「へえ…、追い剥ぎどもの親分さんかい」
俺はやってくる男にそんな言葉をかけてやった。
「追い剥ぎだと…?」
階段を下りてくる男…、ギルドマスターと呼ばれた男の眉がピクリと動く。見れば機嫌が悪そうだ、手に持った酒瓶から察するに飲んでた所に騒ぎが起こり渋々ながらも下に下りてきた…そんなところだろうか。
「おい、お前!誰が追い剥ぎの親分だ!」
「おい、口の聞き方に気をつけろよ。誰がお前だ、誰が!え?」
「そりゃこっちのセリフだ!誰に向かってクチ聞いてんだ、ギルドに所属しているテメェが生意気なクチ聞いて良い相手じゃねーんだぞ、俺は。あ?コラ」
「所属?俺はしてねえぞ、だったら生意気なクチ聞いても何の問題もねーよなあ?理解出来たか、ギルドマスター改め馬鹿マスター」
「ぐっ!!おい、ソイツの言ってる事は本当か?」
ギルドマスターは受付の中年女に質問を飛ばす。
「あ、ああ。アンタ、まだ登録はしてない。ちょっとする所でヅーン達三人がちょっかいかけて…」
「おい、何がちょっかいだ、事実を変えるんじゃねえ!冒険者でもない俺を脅して金を巻き上げようとしたんだろうが!
「それはソイツらが勝手にやった事だろう!なぜ俺が追い剥ぎの親分だ!?」
「聞いてなかったのか?それとも無かった事にでもするつもりか?俺が難癖つけられた時も、脅され金を巻き上げようとしても、おまけに武器を抜いて俺を殺そうとしても助けたり止めようともしない。それどころか『礼儀を教えてやんな』とけしかける始末さ。つまり共犯、追い剥ぎの仲間だよな?俺を殺しても良い、持ってる金を奪い取っても良いって追い剥ぎをギルドが認めてる訳だからよ!!そんなギルドの
「ぐくっ!な、ならすぐにでも登録してやる!そしてコイツらにワビを入れさせる。それで良いだろう!」
ギルドマスターはそんな勝手な事を言って来た。
「お断りだ!それで俺を冒険者って事にして、冒険者同士の勝手ないさかいって事にしたいんだろ?それで悪事ではないと言い張る、追い剥ぎが無い頭使って考えそうな事だ!」
「テ、テメェ…。黙って聞いてりゃあ!!生かして出しゃあしねえぞ!おい、お前らッ!!」
そう言ってギルドマスターはギルド内にいる成り行きを見守っていた冒険者に声をかける。
だが、先程の俺の立ち回りを見ていて躊躇しているのか冒険者達は及び腰だ。
「おい、テメェら何を迷ってやがる!この元A級のゴトユーキ様が自らやるから周りを固めろって言ってンだよ!そんくらい出来ンだろ!」
そう言って冒険者達をけしかけ、自身は俺と対峙するように近づいてくる。
「そ、それなら…」
そう言って冒険者達は戦意が上がらないまでも俺を取り囲むように移動する。
「おい、一人は扉の前にいろ!絶対に外から人を中に人を入れるな!」
「そんな必要はないと思うがねえ…」
「あ?何か言ったか?」
「何も。それで…、やるの?」
俺はギルドマスター…ゴトユーキと名乗った男に向かって
「死ねッ!!」
先程の三人のヤツらとは明らかに違う素早い動きで一直線、短剣で俺の心臓を狙ってくる。コイツは現役の時に腕利きの盗賊だったのだろう、狙い澄ました一撃だった。
「遅いよ」
「ッ!!?」
ゴトユーキの顔が驚きに歪む。心臓があると確信し突いてきた場所に既に俺はいない。既に体半分右側に移動し、短剣は空を切る。
「悪いお
そう言って俺はナイフを握ったゴトユーキの手を掴み握り潰した。ゴトユーキは悲鳴と共に短剣をポロリと落とす。
「うがあああっ!わ、分かった。負けを認めるッ!た、頼む!もう何もしない。だ、だから許してくれ!」
ゴトユーキがそんな泣き言を言い出した。俺が手を離してやると、
「す、すまね…エッ!!ぐあがあああ!」
謝るふりをして無事な左手に隠し持っていたであろう短剣を握りい襲ってきた、しかし見通していた俺はすでにその手首を掴み骨を握り潰した。二本目の短剣が床に落ちた。
「お手手は右と左、二つあるもんなあ。お前の考える事なんてお見通しだよ」
死角になる位置からの左手に持った短剣による一撃、このゴトユーキが盗賊ではないかと思った時から俺はそれを予想していた。盗賊…、ヤツらの戦い方は意表をついてくるものだ。特に背後や死角に回っての一撃は恐ろしい。手練れの戦士ですらその一撃により命を落とす事も珍しくはない。
「砕いておくか…、外すくらいじゃ自分で治しそうだし…」
俺はゴトユーキを足で転がし、うつ伏せにさせると両肘を掴み骨を潰す。さらに両肩に手をかけた。
「元A級冒険者なら、森の魔獣『
俺は両手の握力を全開で握り締めてやる。するとゴトユーキの両肩が完全に砕けた感触が伝わってきた。ゴトユーキの悲鳴が上がる。
「最早お前の腕は動かん、それから!」
俺はゴトユーキを床に力一杯投げつけてやった、ヤツは受け身も取れず仰向けに倒れる。間髪入れず俺はその両膝に飛び乗って全体重をかけてやった。た。面白いように両膝が砕ける。
「お前、手だけでなく足クセも悪そうだからな。潰させてもらったよ、どうせブーツにも刃が出るような仕組みにしてるんだろ?」
そう言って俺がブーツを注意して見てみるとつま先の下あたりに何かが飛び出てきそうな穴がある。ナイフの刃が出てくるにはちょうど良い形状だった。
「やはり…な。ブーツに
「な、なんてヤツだ。あるか分からない隠し武器の為に両膝を砕くなんて…」
「ひ、ひでえ…。無かったらどうするつもりだったんだ」
俺の独白に取り囲んでいる有象無象の冒険者達が騒ぐ。
「確認してから両膝を潰すっていう選択肢はねえよ、俺を不意打ちしてでも殺そうとしたヤツだからな。どの道、足を潰してから
「「ひ、ひでえ…」」
取り囲んでいる冒険者はすっかり戦意を失っている。
「お前らもこのゴトユーキに従ったな。つまり追い剥ぎ集団の仲間達…って訳だ。逃してやるほど俺は甘くないぞ」
□
付与魔法は便利なものだ。今回の騒動に関わった者は全て縛られて床に転がっている。
「逃がさないと言ったよな?」
我先にと逃げ出そうとした冒険者達だがあっさりと捕まった。今では絶望の表情を浮かべている。ついでに受付の中年女もだ。カウンターの下に息を潜め隠れていたが蛇縄はそれを見逃さない。見事に捕まっている。
「これで全員か」
ギルド内にいた全員を捕らえ、やれやれとばかりに息をつくと後方からパチパチと拍手の音がする。敵ではないが気配を悟られずに何者かがいたのか、振り向くとそこには…。
「ルーソンさん…」
旅の道連れ、ルーソンさんが立っていた。
万能の付与魔術士(エンチャンター)。ただのバフ使いと思われていましたが、実際はあらゆる事をこなせる無限の魔術士でした。 ミコガミヒデカズ @mikogamihidekazu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。万能の付与魔術士(エンチャンター)。ただのバフ使いと思われていましたが、実際はあらゆる事をこなせる無限の魔術士でした。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます