第42話 合同訓練。 その3
初日が雨でこれは無理かと思いましたが、翌日はカラッと晴天になりました。
昨日の雨が嘘のように晴れています。
ただ地面やこの辺一帯は雨の影響が色濃く残っています。
あちらこちらに見える水溜まりがぬかるんだ地面を連想させます。
「これは気をつけなければいけないモノが増えてしまいましたね。」
「そうですね。足元が緩いと、どうしても力が入りませんものね。」
力学的エネルギーは足場を固定して初めて十全なパワーが発揮されます。
足元が悪いというだけで、危険度は増しますし難易度が上がるのです。
更にそういう状況下で空を飛ぶ魔物と相対した時には危険度と難易度は更に跳ね上がります。
不思議そうな顔でカタリーナが聞いてきました。
「危険が付き纏う魔物討伐を無理に敢行する必要性があるのでしょうか?」
「期日の問題があるのかもしれませんね。もしくはこういう状況も想定しておこなうべしという考え方があるのかもしれませんね。」
答えながらも、私は後者の考えだろうと推測を深めました。
人はどんな状況でも対応する事が出来る様にと考えるモノです。
いついかなる時に魔物や人に襲われるかはわかりませんからね。
「それでは、魔物と遭遇した時の対策を何か考えましょう。」
「いいですね。」
私達はクラスメイトを集めて対策の話し合いをする事にしました。
本来はこういう事も想定して前日までに練っておくのが一番ですが、昨日はあんな事があって私の頭は一杯でしたからね。
という理由を自分に言い聞かせて自分のミスを無理矢理に自分自身で納得させました。
優秀な者が集うシード学園の中でも魔物の討伐をおこなった事がある者は少ないハズです。
そしてこの様な足場の悪い環境で戦った事がる者は更に低い確率になるでしょう。
「先に謝ります。こういう事態になる事も想定して話し合っておけば良かったと思います。私が至らない所為です。申し訳ない。」
「・・・。」
皆は静かに聞いているだけで、抗議する声は上がりませんでした。
やはり王族である私の謝罪の言葉だからでしょうか?
「まずは、班の中で意見を出し合ってください。それを纏めて班長達で議論しましょう。」
「えっ?直ぐに討伐が始まるのでは無いのですか?」
「そうですね。ただ、ぬかるんだ森は危険です。しっかりと対策を考え対応した方が結果は良くなるでしょう。」
「そういうモノですか?」
「ふふふ。ルシファリオ王子の言う事が信じられませんか?」
すかさずカタリーナが声を上げる。
「いえ。」
「みんなが逸る気持ちを抱えているのは分かっているよ。でも準備は絶対に裏切らないからしっかりと対策をしようよ。」
ブラームス君が説得側に回ってくれた様です。
「わかりました。」
渋々という感じで引き下がった彼は勇者側のメンバーだった者です。
事前の模擬戦で結果を出しているからこそ、説得力のある言葉になったのだと思います。
気持ちもわかります。
周りは既に出る用意を済ませて合図を待っている状態なのですから。
それからは急いで班内での意見交換をさせて班長会議です。
その間、班長以外はしっかりと体を休める事を指示してあります。
が、逸る気持ちがある事を分かっているので、手短に済ませる事に注視しました。
しかし、それでも合図迄には間に合わず、初日の討伐時間がスタートしました。
「では、空を飛ぶ魔物には魔法や弓が聞かないと感じた時には引き下がる。地面が余りに酷いときは地面を硬化させる魔法を使うが基本的には中距離・長距離攻撃中心で今日は進めましょう。」
「「「「はい。」」」」
作戦は決まりました。
基本的には二班での合同移動と討伐戦を今日はする事になりました。
もちろん離ればなれに移動するつもりはありません。
基本的にはクラスで固まり動きます。
その中で二班10名での連携戦を繰り返すのです。
「では、行きましょう。」
「「「「「おう!!」」」」」
私達が入る森は【デリーハ大森林】と言い、大規模な森林地帯です。
魔物が幅を利かせるこの世界特有の地理は、地表の面積のほとんどが人間の生活圏では無い為、自然界は広がっているという現状です。
人は集落を築き、塀を立ててその中で生活をする事で種を守ってきた歴史があります。
それは今も変わっていない為、森林は広がるばかりです。
地球の【アマゾン熱帯雨林】の様に大きな面積を誇る場所は数多くあるそうです。
ここ【デリーハ大森林】も例に漏れず大きな敷地面積を誇ります。
なので、数万規模での討伐も可能なほど広いわけです。
「どうですか?」
「やはり奥地へと向かった方が良さそうです。」
ただし、【デリーハ大森林】に入る人数が多いい為に森の入口付近では、魔物を見つけるのも一仕事になります。
「仕方ありません。ちょっと足を速めましょう。」
私は魔力を集めます。
集団に『クイック』の魔法をかけて行動スピードを高めます。
効果時間はさほど長くありませんが、それでも速さは手に入ります。
「「「「おぉぉ?!」」」」
驚きの声?が上がっています。
「さぁ、これで少しは速く動けるはずです。森の奥へ向かいましょう。」
「本気か?」
「うん。何だろう?このザワツキは・・・。」
「はぁ。ちょっと規格外じゃねぇ?」
「知らないというのは恐ろしいモノね。」
少し青ざめている人もいるようです。
どうしたのでしょうか?
絶望と希望の間で紡ぐ物語。 ボンバイエ @bonbaie0709
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