おわりに
今回の作品に関して、すべてお読みいただいた方のために少しだけお話させていただきます。
本当はこういった蛇足自体が趣味ではないのですが。
まず第一に。
この作品はおおむねノンフィクションです。ただ十年近く前の出来事を媒体にしているため、不明瞭な記憶を想像で補っている部分もあるため、今回は「ノンフィクション」ではなく、現代ドラマとさせていただきました。
特に、私が今わの際の父よりも自分の感情を優先したことは紛れもない事実であり、それは私自身が一生背負うべき業であると思っています。
ですが。
それを他者に押し付けるつもりは一切ございません。
言い換えれば、私は今回の『「ありがとう」のかわりに』を執筆するにあたり、読者の方々へ伝えたいことは一切ありませんということです。
この作品はたとえば、
生きているうちに父親へ感謝を伝えようだとか、
後悔しないように親と接しようとか、
人間はいつどうなるか判らないことを自覚しようとか、
そのように説教臭く感じられる部分があると思います。
ですがそれは、私の書き手としての未熟さによるものであり、読者様に何かを押し付けるようなものではいっさいありません。
この作品を読んでどう思ったかは読者様の自由であり、そこでなにを感じ取るかもまた、読者様次第であることをお断りしておきます。
ぶっちゃけ、「父親の死を利用して感動を買っているゲス野郎」と言われても反論はできません。「父の日」という題材を元に、今の私が執筆できる作品がこれだったというだけですので。
第二に、そもそもこの作品を投稿した理由についてです。
先にも語りましたが、私は決して「すべてのお父さんを大事にしよう、感謝を示そう」なんて言うつもりは毛頭ございません。
世の中には「毒親」などと呼ばれる、子供に害を与える親がいることも事実だと思うからです。
ではなぜ、このような作品を投稿したのかというと。
私がやっと、「父の死」という事実を受け止めることができたからです。
そのためだけに、八年もの年月がかかってしまいました。
先に「伝えたいことはない」と申しましたが、唯一伝えたいことがあるとすればそれは、「ささたけはじめという男の愚かしさ」であります。
それに対してどう思うかは、やはり読者様次第ではありますが――。
賢明なる読者様におかれましては、きっと言われるまでもない当然の事実だと思います。
ですが私は、父に対する感謝と決意を、ようやく口にする決意ができたということです。
それを、作品という形として昇華し、亡き父に送りたい――それだけが、今作を執筆した理由であります。
もっとも、私よりもたくさんの書物を読みこんだ父のことですから、褒めるよりも先にけなされそうではありますが。
第三に、投稿した日にちについてです。
これは単純に、父の日という世間的なイメージにそぐわないと思ったからです。
もちろん、いろいろな形の感謝や思いはあってしかるべきだとは思うのです。が、やはり当日にそれを示すなら、できればプラスの感情であって欲しいと思うのです。
私のような後悔を語るのは、後日でも問題ないでしょう。
せっかくの記念日ならば、できるだけ喜ばしい日であってほしいと思う、これは私個人のワガママですね。
いろいろ書きましたが、あまり気にしないでください。
私は私なりの父の日を送った結果、こうなっただけに過ぎませんので。
皆さまも、皆さまなりの父の日を送れたことを祝いながら。
父と同じ名前のウィスキーを傾けつつ――それではまた。
「ありがとう」のかわりに ささたけ はじめ @sasatake-hajime
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