強い衝動と人間の残骸について

表現の仕方が、私が以前から感じていた疑問に非常に近い。また、日本人はこういう怪奇小説が結構好きだと思う。

例えば、所謂『皿屋敷』を例に挙げるなら、①まずお菊さんという人物がいて、②そのお菊さんが炊事仕事において酷な仕打ちを受け、③井戸に身投げし、④こと切れた井戸に化けて出る…という流れ。 

これは私達読者が「もし私がお菊さんの立場なら、化けて出るであろう」大きな憤りや悲しみをお菊さんに見出し、彼女の「存在するはずの無念さ」を井戸と言う空間に固定して、初めて怨念が描き出される。その手順を踏むことで、「なんだかリアルで怖いなあ」と思うのであります。
つまり、怪奇小説のベーシックな体裁では、一人の登場人物の中に、「何らかの感情(マイナスである場合が多い)の著しい膨れ上がり」が見られることが多いのではないでしょうか。

この展開が、「復讐が達成されて成仏した、めでたしめでたし」とか、「生きている人間がこの感情の渦に飲まれ、ひとつ廃人のできあがり」のように、時系列の流れに沿って描き出されているので、読み終わって非常にスッキリまとまっている印象を受けました。

もしも皆さんが幽霊になるとすれば、どんな感情をこじらせて幽霊になりたいですか?