第6話 2日目その2

 頭を抱えつつ静華の家に渋谷さんを送り届ける。

これから、静香と2人でクッキーを作ると渋谷さんが言うので、約束通り雪華ちゃんの部屋を見せてもらう。

静華の両親は、静華が社会人になってすぐ亡くなっている。そのため、静華は幼児と2人ですむには大きいこの家で雪華ちゃんと2人で暮らしている。

「ほとんどリビングで一緒に過ごしていたので、物置みたいになってて」と静華は言っていたが、きちんと整頓されていた。

アルバムを手に取り、ペラペラあとめくる。

「スマホで写真撮ってるのに、なんか現像しちゃうんですよね。」と静華は昨日アルバムを見せてくれた。

昨日見なかった分を含めてパラパラとめくる。

殆どが雪華ちゃんのアップで、怪しい人は特に映っていない。



アルバムを一旦置き、クローゼットを開ける。

クローゼットには、雪華0歳、1歳、2歳とラベルが貼られた収納ボックスが置かれ、小さい服がハンガーにかけられている。

どれもこれも小さくて可愛い。

0歳と書かれたボックスを開けると、そこにはケチャップの様な赤いシミがついた涎掛けや穴が空いた靴下も取ってある。

量からすると、もしかしたら全てとってあるのかもしれない。


2歳のボックスを開けると、そこにも小さくて可愛い靴下や涎掛けがあった。

「あれ?少し少ない」

他のボックスと比べると、3分の1位しかない。

そして、

「アルバムにある洋服がない?」

アルバムを棚からもう一度取り出し、クローゼットの服と見比べる。

「足りない、3着。0歳と1歳の服は全部あるのに、2歳のだけ、足りない」

今着るであろう洋服が3着ない。全部、ポンポンだが書かれた洋服だ。

静華ちゃんが一番お気に入りであろう洋服だけが、3着ない。

捨てた?なくした?ポンポンだの服だけ?


「先生ー、クッキー焼けましたよー」

渋谷さんが部屋に入ってくる。

「あら、散らかしましたねぇ」

写真と洋服を並べて置いてあるのを見て渋谷さんが驚く。

「何してるんです?」

「あ、足りない服があるなって」と言うと

「子どもですもん、汚したりして捨てたり無くしたりもしますよ」とカラカラと渋谷さんが笑う。

そう、かもしれない。けど、何か引っかかる。


「片付けてから行きますね」と言うと渋谷さんは

「早く来ないと全部食べちゃいますからね」と部屋を出て行った。


クローゼットの服、ボックスの中身、写真と服を並べた状態を写真に収めてから部屋を片付ける。



私は、静香を信じて、雪華ちゃんの生存を信じてここにいる。

けれど、

「依頼人は時に嘘つきだ、客観的でなければならないよ」

私に事務所を譲ってくれた前所長の言葉を思い出す。

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どうして彼女はあの子を殺したのか AriakE @ArieakE

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