第50話
休憩と探索を数回繰り返して、私たちはダンジョンの中盤よりも奥へ来ていた。
十分な食糧と水、ポーションなどのアイテムを用意していたこともあり、大きな怪我もなく探求は進んでいる。
気がかりなものがあるとすれば、それは――
「ガレイ卿、あなたの動きは些か繊細に欠けている。人間相手ならともかくダンジョンの魔物相手にそのような大振りな武器は可動範囲を狭めて、行動を遅らせますよ」
「ご心配なくタントリス卿。これしきの環境で武器の取り扱いを間違えるなどと、初心者のようなことをする腕ではありませんよ。それに騎士は狭い坑道や森のなかでの戦闘を想定して訓練しています。お心遣いは結構です」
「というか、なぜ貴様のような三流の即興貴族が取り仕切っているのだ? ここはフレンテーゼ王国の王子、シャルルと対等の友であり最年長の俺が仕切るべきだろう」
「アルク王子はダンジョン攻略の経験が少ないと聞いています。この【冒険者のタントリス】ことダンジョン攻略に於いてはこの中では一番を自負していますが」
男子の雰囲気が徐々に険悪になってきていた。
「ど、どど、どうしましょうジェファニーさ~ん……!」
「落ち着いてくださいまし。こういう場合、淑女は取り乱さず、余裕の笑みを浮かべて周りを俯瞰するものですわ。シャルル様をご覧なさい」
「わぁ……。完全に冷静沈着ですね。シャルル様のような方がリーダーに相応しいんだろうなぁ」
「あら、中々分かってること言いますわね。さあ、男子がもめごとを起こしている間、私たちはお茶にしませんこと」
最初は男子の険悪な空気に呑まれてたアイリだけど、ジェファニーの言葉を聞いて落ち着いている。
なんだかシートを広げてお茶と軽食を準備している。ティータイム気分だ。
そもそも、なぜこんな空気になっているのか。
発端はさっきのタントリスの私に対して投げかけられた言葉だ。
『王子には愛する者がいないから、人の気持ちが分からない』
それに気まずそうな反応をしてしまったのが、まずかったらしい。
まずセイがタントリスの胸を掴み、きつめの言葉を投げかけていた。それを止めるようにガレイが割って入るもタントリスの売り言葉を買ってしまい更にこじれた。
それをなだめようとしたクリフだが、もう完全にヒートアップしてしまったらしい。今のタントリスはガレイやセイと言った片親の子を対象に強く当たっている。
転生したら乙女ゲームの悪役王子と思いきや、男装王女 なんですけど!? taqno(タクノ) @taqno2nd
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