異色作。読ませる力量のあるアウトサイダーアート

異色作。
他の作家なら、命がけで助けた幼馴染はヒロイン候補になるだろうし、女性ギルドマスターもヒロイン候補になるし、主人公にウザがらみする辺境伯令嬢もヒロイン候補になるだろう。
が、幼馴染は名のみで主人公は思い出しもせず再会せず、主人公にとっては何の未練もなく、女性ギルドマスターと辺境伯令嬢は、主人公への嫉妬(?)で主人公の命を狙うガチ脳筋で可愛げがなく主人公が「敵」と認定するのが当然なくらい頭おかしい人物。ネームド女性キャラはヒロイン候補どころか憎悪対象になるというあたり異色作。たぶん今後登場するネームド女性キャラは社会的地位が高いほど憎悪対象になるだろう。
周期的に主人公が語るこれらネームド女性キャラへの憎悪感情(主人公視点での理不尽な扱いへの不満感情)は作者の本物の感情が書かれていると思われ、読ませどころである。
これは主人公に適切な協力者・相棒が不在なことで発生する。だが主人公に好意的なキャラは決して適切な協力者・相棒を主人公に用意しない。一応保護者として用意されているフェンリルなどは全く順当に活躍しないので主人公の感情は拗れる。そのことに作者はどうも無自覚なようだ。
パン作り回や、ハーブを用いたポーション作りなどの「日常回?」も異様である。パン作りの方法を経験者から聞こうという発想が主人公にも、たぶん作者にも全くない。ひたすら孤独に試行錯誤している。ハーブを用いたポーションを作ろうとする際は主人公が知識を持っている設定ではあるが、異様に詳しく記述されている。
恋愛ロマンス要素皆無、「理不尽な被害を被った」感情が読ませどころ、「敵」認定した相手への憎悪はさんざん書いておきながら「ざまあ」展開は特にないというか、「主人公が凄いということを認める」ことで毎回区切りは一応つくが、組織の一番トップの偉い人から認められただけで、その組織は全く主人公の凄さを認めず、偉い人も「周知させる」と言って全く周知させないという理不尽社会。この理不尽さは作者の計算によるものではなく作者の何かしら実感情に由来すると思われる。
読みだすと止まらない。間違いなく面白い。作品構造とか伏線とか論理は、普通の作品として読むとボコボコで後付けだらけである。でも読ませる。
カクヨムファンタジージャンルに登場した、もの凄いアウトサイダーアート。

追記。作者がコメ欄を全然読まないので、読者からの指摘(わかりやすいところでは×「ベット」 〇「ベッド」という誤記の指摘)が全く通じないので、作者に読んでもらうよう「ほめ殺し」してみましたが、評価★3つは過大評価だった。★2つか1つに変更したいけど一度つけた評価はカクヨムの仕組み上、下げることできないんだな…
「アウトサイダーアート」という言葉は、必ずしも誉め言葉ではありません。

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