遠乗りで買い物

「明日はフウイの遠乗りに付き合ってよ」

「ご一緒させていただきます」

「東側の北の方が果物で有名なんだって。リンゴやミカンが採れるみたいだよ?」

「あ、あるだけ買ってもいいのですか?買わせてください」


 フウイも反応して、買い占めがダメとは言えなかった。果物や野菜はおやつとしてあげているから。


 防具屋によってファイアドラゴンの服を受け取って、その場で5重付与をしてから、自分の倉庫にしまう。予備だからね。今日は帰ってから2日後の準備をしてから、明日は遠乗り、果実をたくさん食べるんだ。



 北に向かうと徐々に高くなって山の上に街があった。山の上に来ているから寒いな。寒いけど活気があり、店頭には果物がたくさん並んでいて、赤やらオレンジ。店の前は赤が多い。店員さんに聞いてみる。


「これって、イチゴ?」

「よく知ってるね。ジャムにするといいよ。生でも結構おいしいけど、どっかの街までは持たないだろうね」

「味見してみていい?」

「いいよ」


 赤い実を1つ、口に入れると甘いのに酸っぱい果汁が口いっぱいに広がる。甘い匂いもするので、顔を擦りよせるフウイ。食べたいようだ。


「とりあえずこの箱頂戴」

「まいど」


 買ったイチゴを食べようかとシャロンと1つずつ手に取って、食べたときに箱へ顔を突っ込んだフウイが、むしゃむしゃと口を赤くして食べていた。


「あ、フウイ。いっぺんに食べないの」


 余程美味しかったのか、むさぼり食べている。お行儀悪いぞ。


「馬の方は気に入ったみたいだね」

「全部頂戴。他にいい店ある?」

「イチゴなら他の店から見繕ってくるよ。他に欲しいものはあるかい」

「他の果物も欲しい」


 店員さんからリンゴにカキ、なんかもおいてあった。全部といって驚かれて、しまい込みながらリンゴをフウイに食べさせる。満足そうに一口でむしゃむしゃしていた。2回ほど追加であげた。


 リンゴとイチゴをあるだけお願いといって、リンゴよりもイチゴが集まった。お金の精算をしたら、詰め込めるだけ詰め込んで店をあとにする。果物は十分に買い込めた。


 高いけど、ジャムも買い込む。他の季節の果物があったので、パンにつけて楽しめるんじゃないのかな?シャロンがジャムを片手に薦めてくるから、しかたなく買い占めない程度で買うようにいった。出てきたのは箱詰めされたジャムだったけど。大量の果物を買い込めたので、満足だった。王都ではあっても高いからね。移動費がないとだいぶ安いと思う。


「今日はいい買い物でした」

「シャロンがそんなこと言うの?」

「生食出来る果物が欲しかったのです。あってよかったです」

「リンゴを追加で買ってなかった?」

「フウイの分も買わなければと思ったのです」


 そういわれると悪くなかったのかと思う。あとは干し草か。馬屋で聞くのがいいのか、商業ギルドで扱っているのか?


 王都に着くと馬屋で、干し草について聞いてみる。どうやら、干し草にもいろいろと種類があるらしいので、おすすめの配合を用意してもらった。敷き藁じゃなくて、食べる方ね。たまに買っていた敷き藁も多少分けてもらった。配合自体は馬の好き嫌いがあるので、様子を見ながら変えるのがいいと教えてもらった。お世話してもらえるところなら、心配はいらないんだけど。予備はあった方がいい。村じゃ売ってない。


 帰るとローレット様と鉢合わせる。


「ただいま戻りました」

「あら、どこへ行っていたの?」

「学園ではあまり遠乗りも出来ないので、日帰り出来る範囲で遠乗りしてきたました」

「それでどこへ?」

「ミツシャス伯爵領へ行ってきました」


 扇子を広げると口元を隠す。見下されているから圧力がある。


「いいものはあった?」

「イチゴは甘酸っぱくて美味しかったです。何個も食べられますね。リンゴはフウイのせいで、まだ食べてないです。ええと、食べますか?」


 目が細くなって獲物を狩るような、そんな感じがする。空間倉庫からイチゴを1箱取り出した。


「悪いわね、いただくわ」


 侍女が恭しく受け取ると去って行った。待ち構えていたわけじゃなさそうだったけど。イチゴだけでよかったのかな?明日出て行くのに、お礼ぐらいはしておきたいな。


 シャロンに執事さんを見つけてもらい、リンゴをあげることにして調理室に案内される。


「ビルヴィス家にはお世話になりました。皆さんで、食べてください」

「よろしいのですか?」

「はい、皆さんで。ローレット様にはイチゴを渡しましたし、明日から学園寮で暮らすので、使用人の皆さんにも食べてもらったらなって」

「ありがとうございます。お世話は当然のことですのに」


 執事さんはなんだか感動してうるうるしている。料理人の人ははりっきってリンゴのデザートを作ると宣言していた。それから、メイドさん達が取りに来て、休憩中に食べる分を確保していた。他の使用人や兵士の人ももらえるならって、持って行っていた。


 その晩はベイジーンとローレット様と一緒に食べることになった。サイモシー様は仕事で忙しいので、遅くなるそうだ。


「明日から後輩になるんだね。楽しみにしているよ」

「楽しみにされても。禁書庫通いが終わってないし」

「学園に住んでいるなら、すぐに会えるよ」

「それよりも婚約者とかに会ってた方がいいよ」


 学園卒業後は結婚するんじゃなかったっけ?


「1年だけ伸ばしてもらった。領主の勉強に学園の研究で時間がないからね。そのかわりに、母上に花嫁修業をつけてもらう」

「あまり待たせないようにね。これ以上の延長は認めないわよ」

「わかっています、母上」

「へー、頑張ってね」


 忙しくなるベイジーン。会っている暇は少ないはずだ。初日は入学式と実技試験。剣と魔法、貴族科。退学して、職人を目指す者もいる。実技免除がなければ、そっちの道で退学出来たのに。貴族科は中身は様々学べるようになっているが、文官系のコースに領地運営の領主コース、両方混じったような取り方も出来るみたい。


「お待たせしました、リンゴのパイにグラッセでございます」

「グラッセなんて珍しい。程度のいいものがまわってきたんだね」

「いえ、ランス様からのご提供がありましたので使わせていただきました」

「ランスからならあり得るか。ありがとうねランス」


 ベイジーンは美味しいといいながら食べていた。それから今日していたことを話すことになり、母上だけずるいということになった。イチゴの提供で手を打ってもらった。

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神様に無理矢理生き返させられた 羽春 銀騎 @haneha

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