ヒャハハハハハッ!! 面接よろしくお願いします!!
ちびまるフォイ
よくもこんなキ○ガイ採用者を!
「はい! 本日はお忙しい中、面接をありがとうございました!!」
ピカピカのスーツを着た応募者はきびきびとした足取りで部屋を出た。
部屋には面接官と社長だけになった。
「……なかなかよかったじゃないか。私の若い頃にそっくりだ」
「そうなんですか、社長」
「私もね、若い頃はあんなふうに目をキラキラさせていたものだよ。
あの子はきっと良い社員に成長することだろう。ぜひ雇いたまえ」
「あ、社長。でも、本日の面接はもうひとりいるんです」
「おおそうか」
「それでは次の方、どうぞ」
部屋に入ってきたのは、人を何人か殺めてきているような顔の男だった。
「ヒャハハハハア!! 今日は面接よろしくおネがいしまァす!!!」
男は持っていたナイフを舌でなめた。
面接官と社長は思い切り目をそらした。
すでに関わってはいけないヤバイオーラをかもしだしていた。
けれど、面接である以上はなにも聞かずにお引取りいただくわけにもいかない。
「え、えーっと………あなたはどうして弊社を受けたんですか?」
「ヒヒ……僕は昔からプログラムが得意で、ここならプログラミングし放題だと思ったからですぅぅ! ヒャハハハハハハ!!」
「なるほど……」
「はやくプログラミングさせてくれよぉぉ!! もう我慢の限界だぁぁアハハハハハハ!!
みんなみんな僕がプログラムしてやる!! アヒャヒャヒャヒャ!!」
「ええーー……」
お引取りというか警備員を呼ぼうかと思ったが、
下手に刺激して刺されてしまったら怖いのか社長は腕組みしたまま脂汗を流すだけのガマガエルになっていた。
「ちょ、ちょっとお待ちいただけますか」
面接官は社長をキャスター付きの椅子に載せたまま別室に移動する。
声がもれないことを確認してから話し始めた。
「社長、あの応募者どうしますか」
「どうもこうもないだろ! あんなやばい奴、会社にいれてたまるか! 事件になる!」
「そうですよね……しかし、履歴書を見てください」
「えっ!? このプログラムもあんなやばいやつがやったのか!」
「腕はたしかみたいです……どうします?」
「どうもこうもないだろ。人間性に問題がありすぎる!
いいか、会社に必要なのは優れた能力ではなく回りと強調できる力だ!
従順な人間は能力のある人間よりも価値がある!!」
「うまく使いこなせたら、この実力は武器になりませんか」
「くどいな。さっさとあの社会不適合者を追っ払うぞ」
社長と面接官はふたたび面接の部屋に戻った。
ルーティン的に質問したらさっさと追い返せという目配せが社長から飛んでくる。
「えーーと……あなたは弊社に入ってどう活躍したいですか?」
「アハハハハ!!! まず御社のセキュリティプログラムを僕が作り直して
顧客からの信頼感を得たうえで新しい金融プロセスを組み込み効率化をしますゥァアハハハハハハハッハ!!」
「口調はアレだがまともだ!!」
面接官は思わず目からウロコが飛び出した。
ふたたび社長と別室に移動する。
「社長! あの男は非常に優秀ですよ! 雇うべきです!!」
「なんでそうなるんだ! あいつの目を見てみろ! 確実に人を殺しているぞ!!」
「目なんてどうでもいいんです! 実力があり、熱意があり、非常に優れた判断力がある!
こんなにいい人材はどんなに頑張ってもそう出会えませんよ!!」
「うちには人を大量に雇う余裕なんてない! あんなヤバみの化身を雇う金がどこにある!
最初の好青年を雇えばいいじゃないか!」
「あんな面接マニュアル本を読み込んだだけの人よりも、
能力がある人材のほうが我が社にとってもいいに決まってるでしょう!」
社長とはことなり履歴書やこれまでの経歴をしっかり読み込んでいる面接官には、
あのナイフ同伴の男がいかに優れた能力を持っているかを理解していた。
最初こそ、雰囲気や受け答えにおびえる部分はあったものの
話している内容じたいはまっとうで会社を成長させてくれる勢いを感じた。
「社長お願いです!! あの人を雇いましょう!!」
「言ったはずだ! うちにはそんな金はない!」
「ここが会社を成長させられるかどうかの分岐点なんですよ!! お金をケチってる場合じゃないんです!」
「だったらアイツを雇う代わりに会社で一番足を引っ張っていて
今の立場にしがみついて給料だけもらっているようなお荷物人間をやめさせろ!!
それならひとりぶんの枠が空くから、あの男を雇っても良い!」
「わかりました!!」
その後、職を失った社長は公園のベンチで静かにハトへ餌をあげていた。
ヒャハハハハハッ!! 面接よろしくお願いします!! ちびまるフォイ @firestorage
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