第2話 目的


どうやら僕は異世界転生をしてしまったらしい。

これから楽しい夏休みが待っていたのに……。


風景がいいここで夏休みを謳歌するのはどうだろうか。

良い!!

天才的なアイディアを出してしまった。

リズとこのロマンチックな街でショッピングをするんだ。

リズに似合う服を買ってあげたり、リズが大好きな花を見に行ったり。



あれ?

そもそもこの世界のリズと僕が知ってるリズは好きなものは一緒なのか?

同じリズなのか?


これからこの世界のリズも知っていこう。


「いのりくん、準備できたかな?」


「おまたせ」


今日の予定を一通り説明されながら目的地へと足を運ぶ。


魔王城へ行けるレベルだけど剣の扱い方に慣れてないだろうからとリズが配慮してくれ、剣に慣れるまで修行ということになった。


移動しながら朝考えていた事をリズに話してみることにした。


「リズ、危ない冒険とかはしないで、一緒に街で思い出をつくるのはどうかな……」


リズの表情が一瞬変わったのがわかった。

ぱっちりした目が節目がちになり、またすぐにいつもの微笑みかける表情に戻る。


「いのりくんにエスフルトのこと教えてないもんね」


小さなピンク色のお花がまばらに咲いた原っぱのような場所に到着した。


リズの言葉を遮るように、何かが僕目掛けて斧を振りかざす。


初めて見るモンスターの姿だった。

猿のような容姿、僕の腰くらいの身長だ。

武装をし、明らかに敵意を感じる視線を一瞬見せる。


猿のモンスターを観察できたのは一瞬で、すぐに斧を地面に落とし、猿自身も地面に突っ伏していた。


隣で分厚い本を閉じるリズ。

それと同時に猿が薄くなり徐々にいくつもの光となり上空へ消えていくと、小さな石のようなものが落ち、小瓶に回収していた。


「いちいち本開かなきゃ魔法使えないの」


にこっと笑いながら分厚い本を腰のベルトに戻す。


「さっきのがモンスター。

もともと穏やかな動物だったんだけど、魔王の魔力によってほとんどの動物がモンスターにされて、人間に攻撃してくるようになっちゃったの。人間が住む街には来ないんだけど」


「それでも街の外に出ると危険な目に合う人が多いから、私たちは魔王を倒そうって話し合ったの」


たしかに僕たちの性格ならそうなるか。

半端な気持ちで話し合ったわけではないのはリズの表情を見ればわかる。

くんも魔王討伐を目標にしてるだろうし、そもそも元からいた僕が決めた行動を勝手に変えるわけにもいかない。


僕自身もこの世界の人たちが困ってるなら助けたい。


「そうだよね、変なこと言ってごめん……。剣、少しでも上手く扱えるようになるから」


髪を耳にかけながら笑顔で答えてくれるリズ。


この世界で僕は何を見てきたんだろうか。

命をかけてでも守りたいものがきっとあったのだろう。

心配性のリズもそれに応えて一緒にきてくれてるのかもしれない。

ここもリズのいる世界だ。

平和にしなくちゃいけない。


どんな世界でもリズのいる世界は守る。




「ところで、ずっとリズの後を付けてるこの人は誰?」


長身でさらさらな黒髪の男が視界にずっと入って気になっていた。


リズのストーカーか……?


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エテルノオラシオン 結麻 @yuma_390

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