第40話 食欲の秋と約束の場所
夜空に星が輝き始め
冷たい風は2人の距離を近くする
いつも変わらずそこにある風景は
何年先もそこにある事を疑わない
今この時が
もう2度と来ることがない一瞬の繰り返しである事を
失った時に初めて思い知る。
『カランカラン♪』
チップ「いらっしゃい。(ん?ハナとマリが2人だけで来るなんて珍しい……。
そういや昨日の昼間来たユリはいつもより食べる素麺の量が少なかったな…。
珍しく一人だったし……。
仲良しグループに何かアリ、か……?)
空いてるお席、どうぞ。」
ハナ「ここでいいかな?」
マリ「はい。」
ハナ「どうしようか?素麺食べる?」
マリ「さすがに焼肉いっぱい食べちゃいましたよ。それに、私ここでバイト始めたんで、新作素麺、もう食べちゃってるんです。」
ハナ「あれ?そうなの?」
マリ「はい。なんで……私はお腹もいっぱいだし、飲み物だけで大丈夫です。」
注文した2人にコーヒーと紅茶を運び、カウンターで食器を拭きながら聞き耳を立てるチップは
話題をどちらからともなく切り出せずにいる雰囲気にヤキモキしていた。
ハナ「……。」
マリ「……。」
マリが何気に手を拭こうと取り出したハンカチを落としてしまう。
ハナマリ「「あっ……。」」
ハンカチを拾おうとした手と手が触れ合う。
チップ「(なにトレンディドラマみたいな青春してやがるんだ、アイツら……とっとと要件を言え!ここから動けないじゃないか……。」
マリ「あの……。」
ハナはついに来たかとビクッとする。
サチコを取るかマリを取るか……。
マリ「ずっと……ずっと思ってた事……行ってもいいですか……?」
ハナは鼓動が大きくなる。
サチコ取るかマリを取るか。
マリ「いつも……ハナ部長って……その……。」
ハナ「う……うん?」
きた!人生初の!これが告白されるってやつなのか?!
サチコを取るかマリを取るか!
チップ「(挙動不審すぎるだろ!ハナ!マリちゃんが何か言おうとしてるんだ、キョロキョロするな、堂々としろー!)」
マリ「あぁ……どうしよう……。変に思わないでくださいね……。」
ハナ「う……うん。」
サチコを取るかマリを取るか!!
マリ「部長……。」
サチコを取るかマリを取るか!!!
マリ「いつも……。」
クラリス「チップ?ねぇ、ちょっとこっち手伝って!」
チップ「(今いいとこーーーー!!)」
クラリスに呼ばれチップは退場する。
マリ「その……。」
ハナ「うん……。」
サチコを取るかマリを取るか、
サチコを取るかマリを取るか、
サチコを取るかマリ「パンツ出し過ぎです。」
ハナ「パンツ……出し……?!えっ?!」
マリ「いつになったらズボン買い替えるんですか?それ、壊れてるんですよね?ほとんどいつもチャック空いてますよ?」
ハナ「チャッ……ク?」
マリ「なんか、こんなこと言ったら私がいつも部長ばっかり見てるみたいで勘違いされそうですけど、そういうことじゃなくて、気づくといつもパンツ見えてるんで本当に気になっちゃって!!」
ハナ「……。」
マリ「妹さんに直してもらってた、あの時から買い替えてないんですか?」
ハナ「あ〜……制服のお金、ついつい弦買うのにつかっちゃって……ズボン何着もあるし……いいかな……なんて……。」
マリ「よくないですよ!」
ハナ「……。」
マリ「……。」
クラリスからの用事を済ませてチップが2人を観察できる場所に戻ってくる。
うつ向くハナを無言で見つめるマリ。
チップ「……(何やら進展があったようだが……。)」
『ニャア……』
窓の外を黒猫が通り過ぎる。
チップ「……?アン……?」
先ほど飼い主に戻したばかりの、アンによく似た黒猫は
塀を渡り屋根を登りどんどん街の全てが見渡せる高さまで登ってゆく。
黒猫が見上げた夜空には星と月。
瞳に映るのは、赤い隕石。
黒猫は一瞬にして強い光に包まれる。
この日、地球に大量の隕石が降り注いだ。
数年前の流れ星が引き金となっていた、その隕石の被害は比較にならない規模で人々の生活はこの日を境に一変する。
人々がこれを後にセカンドインパクトと呼び、のちの戦争へと繋がっていくとこは、また、別のお話。
エリオットに恋をして episode1 終。
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エリオットに恋をしてepisode1 クロコリコ @kurokorico
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