チリトリちゃんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
教授とチリトリちゃんの関係性とてもエモい…!
なんですかね…人間であるわたくしたちはAIという存在に対してどこかしらで「ゆうてデレるんやないの…というかデレてるんやないの!?」(感情を持ち得るんじゃないの!?)みたいな淡い期待と「いや…そんなまさかな…」みたいな複雑な感情がないまぜになるものだと思うんですが(注意:主義がデカイ)その時点でなんというか非常に罪つくりな存在ですよね…。世界最強のクーデレみたいなものですよ。
そんな高難易度の攻略キャラを目前にしてヤキモキする中学生男子のようにとても無防備で夢見がちな気持ちにさせられてしまいます。
さておきサスペンス&ミステリー的なお話運びがほどよい緊張感を保ちつつとても丁寧かつロジカルに描かれている会話劇がものすごい小説がウメェーーーー!!!?
冒頭に書いたようにAIであるチリトリちゃんに対して「どこまで…どこまで分かって…」というぎりぎり程よいサスペンス感がとっても素晴らしいです。
それはその確信犯だったことと両面でAIであるチリトリちゃんの人間への想いが証明されてしまうからで、でもそれがなんだかとても甘やかなんですよ。
一種官能的ですらある秘密のように感じてしまいます。AIという世界最高のクーデレのデレが…透け…見え…見え…!と藤原はたくましい想像力でパンチラゾンビ(※隠喩)になってしまうほどです。
>「どうでしょう。私は自分の行動の全てに合理的な説明をつけられると自負しているのですが」
という台詞も天然クーデレ感があって最高です。
そして教授はチリトリちゃんに感情がある個として扱うことを決めたから最後の覚悟を持ったんだろうなあと思います。
大多数の社会との温度差をきちんとここまで冷静に描いているからこそのこの教授の少し前のめりなくらいの感情やそれをチリトリちゃんが「おかしな人ですね」と笑い飛ばす様がすごいほほえましいくらい温かで、物語の中の救いになっている。
すごい優しい作品だと思いました。そしてこのような良質なSF作品を厨二作品として提出する心意気がぶそあさんはなんだかとても大人だなあと思った次第です。
かつて人を殺したAIと彼女を尋ねた壮年の教授の対話をメインに構成される本作品。対話を通して浮かび上がるのはこのAIの奇妙な生涯なのだが、これが大変面白いのである。
最初の彼女はただの自動掃除ロボット。しかも仕事の内容は主人が目の前で千切ったティッシュを朝晩の2回拾うだけという、まるでペットのような存在だった。ペット扱いされていた掃除AIがどうやって人を殺したのか、そしてその後処分もされずどうして今日まで存在し続けてきたのか?
一つの事件をきっかけにめまぐるしく移り変わる彼女の運命だが、どのような立場になれど彼女の行動原理はただの掃除ロボットだった当初から何一つ変わらないのである。変わっていくのは彼女に対する人類の反応だけで……。
人間を遥かに超える能力を持ちながら、自らの判断で人を殺せるAI。果たして教授はそんな彼女に何をさせようというのか? そしてそれに対する彼女の反応とは? その答えは是非最後まで読んで確かめていただきたい。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
人工知能である『彼女(私)』と、そのインタビュアーである『教授』との、密室での静かな対話劇。
SFです。人工知能をモチーフにした、思考実験的な(というのもニュアンスが違うかもしれませんけど、少なくともアクションSFとかではない)お話。
AIである彼女の犯した殺人に関して、尋問のように事実を掘り下げてゆく、という、一見ミステリのような(というか、事件の真相を餌にするという意味では実際にミステリしている)読み口が面白く、先を気にさせる話運びの巧みさが印象的です。
とにかく丁寧というか、綺麗に組み立てられた展開がすごい。自然でありながら読ませる力があり、気づいたら最後まで読み終えていました。終盤なんかもう本当に心地いい。
正直、内容についてはただ「SFです」以外に何も言えないというか、個々の出来事に触れたところでネタバレにしかならないので、あまりレビューで語れるところもないのですけれど……。
内容を気にするよりは、まず読んでみてほしい作品です。作中の事実や設定より、この「お話に釣り込まれていく感覚」が楽しいので。とにかくきっちりと収まりのいい、完成度の高いお話でした。