まるで和から洋へ移り変わる頃のような、夢と現を行き交うような、それでいてひとつテーマを濃く深く取り巻くような構成に、引き込まれました。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(134文字)
男は唐突に検査入院した妻が残した謎の言葉に振り回されます。やがて知ることになるその意味は辛辣なものでした。細やかな描写を積み上げて構築された素晴らしい作品と思いました。
妻と夫のすれ違いの物語、一話短編です。美しく磨かれた廊下、玉石(たまいし)で飾られた玄関口、瑞々しい生花……などという描写はないのに、今しも暇(いとま)をこう、和装の夫人と夫の背景に、そのようなビジュアルを感じるとはなんとしたことでしょうか。冒頭の一文から、雰囲気のある美しい作品です。本文中には、ハーブ、ベランダなどのワードが使われ、現代ものであるのは一読瞭然にもかかわらず、旧い時間を感じさせる美しい作風に身を委ねてみませんか?名画を鑑賞したような余韻までを、ぜひお楽しみください。
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出だしの昭和初期の文学のような表現から、ぐっと引き込まれました。最後の「こう来るか!」というオチも素晴らしい。小説の面白さが、短い文章の中に凝縮されていると思います。