第20話 17  終章  (完結)

「……」

「……」

「……」


幾時間と眠っていた事だろうか?


ふと、目を覚ました克己。あたりを見回すと、真っ暗な空間にいる。

その地面のほうには、薄桃色の花びらが敷き詰められている。

白や薄桃色に散りばめられた花びらが敷き詰められて、絨毯のよう。


「さく‥…ら?」


それもそうだ。桜なんてすっかり葉桜となっている季節。


「ここはどこだ?」


全体的に暗く遠景がぼやけて見え、非現実的な世界の中にいるのを自覚していく。

ハッとした克己はここが現実ではないかもしれない、と気付く。


「夢の中なのだろうか?」


克己は夢の中なのだろうか?とこれ以上深く考えるのを止めて、ただ呆然としている。


「克己……」


(‥…?)

克己の脳内?に響く声がある。


「克己……」


(……また……?)

どうやら幻聴ではないようだ。


「俺を呼ぶのは誰だ??」


「……たすけて……私の声が聞こえるのなら……」

「誰だ……誰なんだ……?」

「私はなぎさ。あたしにもわからないの……。この声が届く人を探していたの……」

「……美和……じゃないのか?」

「ごめん……ね。でも、私の声が届くあなたなら……」

「……」



「逢いたい……逢いたいよ……」



「き……君はいったい……?」

「お願い……名前教えて……」

「俺の名前は……克己」

「克己……ね。ありがとう。どこかで会えるのかな?でもあまり遅くならないで……」

「どういう事なんだ??」


「……私の胸の中には‥…ううん……なんでもないの……」


胸の中に……?えっ?何が……?


急に克己の周りを大量の桜吹雪が吹き荒れる。

急な展開の話に驚きを隠せなかった克己は思考が止まり、これまでの美和との出来事が儚くも桜の花びらのように散っていったのを感じたのだった。


「……渚‥…か。……どんな人なんだろう?なんだか昔から知っている人のような気がする……」


脳内に響く声からは顔は見えない。でも、雰囲気。それから渚の魂が見える気がしている。

美和を愛したい、愛しよう!って言う気持ちが……わからなくなってくる。

美和……は俺が一生をかけて愛する人ではなかったんだ……?

わからない。今は何もわからない……


渚……?いつの日か出会う事があったら。その時はどんな関係なんだろう?


知りたいようで知りたくないかもしれない。そんな複雑な気持ちが克己の心の中を駆け巡る。



「俺は……何かを間違えたんだろう……か?」




                           [ 完 ]







  ▮あとがき▮


 桜俊です。 「音無」を読んで頂きありがとうございました。

前回の投稿から間が空いてしまいましたが、それまでの出来事によって「ファンタジー作品」として継続させるのではなく「恋愛物」として完結させて区切りたいと思いました。


それは次回構想中の作品に向けてで、どの様にお届けするのかはまだ明かせませんが。鋭意執筆してまいります!


皆さんありがとうございました。






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音無 桜俊 @ohshun

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