前作『壁尻殺人事件』の続編となる今作。尻ーズ化してほしいと作者に頼み続けたかいがありました(笑)ありがとうございます(笑)
続編と書きましたが、推理ものとしてはこちら単体でも楽しめます。ただ、稲村先生の強烈なキャラクターはぜひ1作目から知ってもらいたい、というのがファンとしての本音。
前作では、壁尻という特殊性癖を持つ稲村先生が(時に性欲に狂いながら)推理をするという流れなのですが、今作はウェディングドレス殺人事件。彼の性癖は活かせないのでは?と思いきや、今回も彼は暴走しながら見事な推理を披露してくれました。
(女性が辱しめられていれば満足なのかも?)
ろくでもないことばかり書いてしまいましたが、作者の筆力は本物。
畳み掛けるような性癖トークと豊富な知識に裏付けられた推理力。稲村先生の過去の自慰の回数だとか外国人のお尻が大きいだとか、不要な情報が入っているのにも関わらず全く長さを感じさせません。
瞬時に読者を掴むコミカルな文章と、よく考えられた構成。一気に読ませる文章力に毎回唸らされてしまいます。
こちらの作品の魅力はレビューでは伝えきれませんので、ぜひ一度読んでみることをおすすめします。
特殊性癖の殺人事件を解決する、特殊性癖の天才犯罪心理学者・稲村秋人シリーズの第2弾。
今回は女性の遺体が破廉恥な改造ウェディングドレスを着せられるという連続殺人事件です。
相変わらず欲望全開で綴られる怒涛の思考展開が最高に面白いです。
稲村先生がこうなるに至った生い立ちにも触れられ、彼の為人への理解が深まりました。
フェミニストの会合へ参加するシーンでの見解が秀逸でした。
特定の人や物事をラベリングして、外側から考察・批判することは、意外と簡単です。
もしかしたら我々も、『特殊』なものを気軽に断罪しているかもしれない。
『普通』はこうあるべきという基準、それがただの個人の主観であることにも気付かずに。
稲村先生は、自分が『特殊』であることを自覚した上で、『特殊』な事件を起こした犯人の心理に切り込んでいきます。
誰しも歪みを抱える可能性がある。『普通』ではないということは、普通にある。
それを受け入れるのか、拒絶するのか。
犯罪者の心の闇を暴く、解決編は圧巻です。
一見イロモノっぽいラベルの貼られた本作ですが、大変読み応えのあるミステリ作品でした!
まずこの作品を全編通して感じていたのは「キモイ」でした。
一応褒め言葉です、この作品では。
主人公は清純潔白な好青年でも、ましてや犯罪に対して意味もなく憤怒を覚えるような真人間でも無い。
欲求に正直で、どこまでもクズなカス野郎です。
けれど空っぽではなかった。
あるいは、ある意味では空っぽだった。
どこまでも無意味な事実が意味を成して物語を形作って、どこまでも蔑まれるべき主人公はただ無意味にこの後も生活を続けるんだと思う。
どこにでもある物語。
けど、だからこそこれは真実であるとすら思える、そんな訳ないのに。
歪みも美しさも人間臭さも、何もかも馬鹿にしたような、けれど肯定したような作品に思えました。
多分そんな意図は無いだろうけども。
あ、普通に面白かったです。
ついでにいうと普通にオススメです、下ネタが平然と詰め込まれてるけどそんなもん気にしてる暇があったら読んでください。