第12話『HUNT/餌 ハント・エサ』(2016)
アニマルパニックの金字塔と言えば『ジョーズ』であろう。たぐいまれな撮影にアイデアに満ち溢れたその作品は、様々な派生作品を生み出した。
拙作の『平家シャーク2020』もそのひとつだ。
今回紹介するのはアムステルダムを舞台にしたライオンパニック映画である。
『HUNT/餌 ハント・エサ』
アムステルダムに人食いライオンが現れた。だが、警察はそれを信じようとせず、町は徐々にパニックに陥っていく。そこへ専門家が現れて警察署長と協力し……というジョーズ以来のアニマルパニックホラーの伝統をなぞりながらも、粗製乱造のサメ映画とは異なる、丁寧で飽きさせない展開とケレン味あふれるショック描写、街で暮らすライオンというセンスオブワンダーが魅力のトータルバランスの高い作品です。
本作の見どころはやはりライオンちゃんの雄姿。路地、電車、寝室、ゴルフ場、病院、等々、様々なシチュエーションに出現するライオンちゃんの異物感は素晴らしく、見ごたえがあります。やはりライオンは自由な姿が一番。都市を走るライオンちゃんの雄姿はすばらしい。
物語は徐々にライオンを包囲していき、ハンターがライオンちゃんを狩る時間となります。まずは警察署長のの知り合いのアマチュア名人が出現し……トナカイの死体をつるしてライオンをおびき出そうとします。だが……
続けて登場したのが車いすのスナイパー。彼はプロなのでアマチュア名人の二の轍を踏むことはありませんでした。ライオンが食べ残したアマチュア名人の死体をつるしてライオンをおびき出すエサにします。
うわぁ~~~えげつない。
こうして倫理無きアニマルバトルの幕が開き、オランダ風残酷バトルが展開していきます。都市の王者となったライオンちゃんに追い詰められ手負いの車いすのスナイパーは、どうせ動かぬならと自らの足を切り取り、クーピーのように地面に血の跡を書いてライオンをおびき寄せるのです。ナムアミダブツ!!
身を挺してライオンをおびき寄せるクライマックス、そして最後まで油断できない展開。そして満を持して炸裂する轢--ッ!!
さらに「わしにはこれが最後のライオンとは思えぬのだ……」
満点です。
最後まで身の詰まった作品だった。
いやはや、ノーマークのオランダ映画から、ここまで楽しめる作品が出てくるなんて。
ホント、映画はおもしろい。
皆さまもどうぞカルマ調整で、知らない映画の世界に飛び込んでみてください。
HUNT/餌 ハント・エサ
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07FMDPBLG/ref=atv_dp_share_cu_r
【編集部からのお知らせ】
1クール12回分の紹介が終わりましたので定期連載は今回で終了です。応援ありがとうございました。
『映画漂流記、本日もカルマ調整』 お望月さん @ubmzh
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