危機一髪
危機一髪は、『非常に危険な状態のたとえ』(新漢語林)である。
出典は、唐代の韓愈(かんゆ)という人が残した『孟尚書に与ふる書』だ。
ここでなにが、危険な状態だと懸念されているのかというと、どうやら、政治のことを指しているらしい。
韓愈という人は、文書家・詩人として知られているが、科挙に合格した官僚である。それも気骨のある儒学者で、その立場から仏教や道教を攻撃したりして、二度左遷されている。
そういう人が、孟尚書に次のような文書を送った。
『漢氏より以来、群儒区区として、百孔千瘡を補修し、乱れ随ひて失う。其の危ふきこと一髪もて千鈞を引くがごとし』
試しに訳してみたが、む、むずかしいよ。
「漢代以降、儒学者たちは、空いてしまった百の穴、千の傷を補おうと努めてきたが、(正道は)乱れ失われた。(完全に正道がなくなってしまう)危険性は、一本の髪の毛で、とても重いものを引くようなものだ(いつ切れてもおかしくない)」
[追記](2024年8月31日)
親切な方が以下のことを教えてくれた。
儒教復興・廃仏論を唱えて、敗北に近い状況にあった韓愈に、仏教擁護派に屈するようなふるまいがあった。
それを知った孟尚書が心配する手紙を書いたのに対して、返信した書状の中に、上に挙げた文言が出てくるとのこと。
上で、『ここでなにが、危険な状態だと懸念されているのかというと、どうやら、政治のことを指しているらしい』の『政治』とは、宗教政策を指すようだ。
訳文の中で、『正道』という言葉を使ったが、これは『儒教』としたほうがよいかもしれない。
よめないし、わからないし Ⅲ 青切 @aogiri
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