少女の暗号

「いらっしゃいませー」

「2名様ですね。お席をご案内します。」


俺はあるファミリーレストランでバイトをしている。接客業なのである程度嫌な目に会うこともあったが、金欠の為、このバイトを続けられているのだ。


そんな事を考えていると、小学中学年くらいと思われる女の子と、少し強面の男性が店内に入ってきた。親子なのだろうか。


「いらっしゃいませー……お席をご案内致しますー……」


俺は恐る恐る通常通りにふるまい接客した。なんとか怒らせずに済んだようだった。


「それでは、失礼致します。」


安堵しながら俺は席から離れると、さっきの女の子が口をもごもごとさせながら小さい声で話し出した。


「あ、あの……」


「はい?どうされましたか?」


俺が答えると、今度は手帳を取り出し、何かを書いているようだった。


そして、何かを書き終わったらしく手帳を俺に見せて来た。


手帳には、『田んぼ すずめ 毛玉 手毬』がそれぞれ平仮名で書かれていた。


首を少し傾げると女の子は「1」と言い、席に戻って行った。


「田んぼ、すずめ、毛玉、手毬……」


俺は結局その意味が分からずに、女の子と男の人は店を出ていき、俺はもやもやしながら家へ帰った。




「あの女の子が言いたかった事って、なんだったんだろうな……」


そう呟きながらテレビを付けると、ニュース番組が放送されていた。


普段ならチャンネルを変えるが、今日はそうとも行かなかった。


そのニュースの内容は、"小学3年生の女児が誘拐され被害者の遺体が発見された"と言う内容だった。


それだけだったらまだ俺の気持ちはマシだった。


だが、親族が公開した誘拐された女の子の写真があの女の子にそっくり、というか、一致していたのだ……


「え……もしかして、まさか……」


田んぼ、すずめ、毛玉、手毬の1番目……

つまり、それぞれの頭文字は……


「た」「す」「け」「て」……


『助けて』かよ……

俺は一気に血の気が引いた。

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最後の最期で慄く話 味覚異常 @ayakomo

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