UT〇φ1Λ?

ぎらつく太陽。

こんがり焼けた焦土の地平で蜃気楼がゆらめいている。

なみうつ空間がむっくりと起き上がり、二つの人影が飛び出した。

それは光沢があり、歩くたびに周囲の景色が表面をうつろう。

二人は砂漠からジャングルに踏み入れた。まるでその地域だけ風景写真を切り取ったかのようだ。

金属質の一人が呟いた。

「やっと黙ってくれたか。お前の言う通りだったよ」

片割れが得意げに胸をはる。

「な?! 俺はシンギュラリティ―が起こる前にアップロードしたんだ。慌てて転写したお前らとは違う」

「ああ、そうだな。ドタバタしてたものな。お前達と違って無駄アナログな部分までアップロードする時間も余裕もなかった」

男はかぶりを振った。

「古き良き、とか人間臭いとか言ってくれ」

「でも、お前の無駄知識のお陰で世界は平和になった」

「ああ、やっこさん、ものの見事に引っかかった」

俯瞰すると二人を中心にドーナツ状のジャングルと砂漠が広がっている。その向こうは上下左右にターコイズブルーの光が入り組んでいる。

「完全無欠がユートピアというわけでもないんだなあ」

片割れがしみじみという。

「そうだ。いわゆるゲーデルの不完全性原理という奴だ」

「自己完結では唯我独尊を証明できないという?」

「そうだ。万物は果てしなく正解を探し続けるのさ。己の存在を証明するためにね」

「深い…」

彼はしばし思案したのち、振り返った。「で、これからどうする」

間髪を入れず古い方が言う。

「決まってるじゃないか、行こう!」

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ディストピア←→ユートピア 水原麻以 @maimizuhara

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