異世界考察

乙枯

治癒魔法とバージニティー

 ファンタジー世界には治癒魔法とか治癒ポーションとかがあって、スゴイものになると手足の欠損とかまで治してしまいますよね。

 実に素晴らしい…現実世界にもあったらいいのと思いたくなります。


 もしもそんな治癒魔法や治癒ポーション(以下、両方まとめて仮に“治癒法”と略記します)が実在する世界だったらどうでしょうか?


 もしかしたら、治癒法が存在する世界だと大人の女性はちょっと困ったことになるんじゃないでしょうか?


 だって、手足の欠損すら一瞬で治癒してしまうんですよ?

 使ったらきっと、処女膜も再生しちゃいますよ?


 怪我して治癒法を使うたびに処女膜が再生しちゃうから、そのあとエッチする時は毎回破瓜の苦しみを味わわねばならないんですよ?


 ファンタジー作品の冒険者とか傭兵みたいに戦いの場に出るような女性は、エッチが嫌いになるんじゃないでしょうか?


 女騎士とか女戦士とか女魔法使いとか…成り手がいなくなるんじゃないでしょうかね?

 あるいは、そういう職業の女性はやたらと身持ちが堅くなるかもしれません。エッチをしたがらないでしょうね。荒くれ者に交じってるヤクザな阿婆擦あばずれ女が、身持ちが堅い処女ばっかりなんですよ…イメージが違ってきますよね。ギャップ萌えな人にとっては大好物かもしれません。


「おう、今夜どうよ、いいだろ?」

「え、イヤよ、やめてちょうだい」

「何でだよ、一昨日はお互いキモチ良かったじゃねえか?」

「アンタねぇ、今日ダンジョンで怪我してポーション使ったでしょ!?

 だからアタシ今、未通女おぼこなのよ。」

「あ~?別にいいじゃねえか、やさしくすっからよぉ?」

「イヤよ、アンタ結構激しいじゃない。

 再開通は別のもっと優しい人にしてもらうから、それまで待って」


 冒険者の集まる酒場でこんな会話があったりするかもしれませんね。


 もしかしたらそういう世界では、怪我をさせてしまう事に対する罪、あるいは賠償責任が男女で差が生じるんじゃないでしょうか?

 男性は怪我しても治癒魔法なり治癒ポーションなりの治癒法を使うだけで済みますが、女性は治癒法によって怪我を直してもそのあともう一度破瓜の苦しみが待っているわけですから、怪我をさせてしまった時の慰謝料は女性の場合は男性よりも割高になるとか…そういう法律というか慣習みたいなものができるかもしれませんね。


 だって考えてもみてください。まだお盛んな若夫婦の奥さんが大怪我して治癒法で怪我を治したせいで処女に戻っちゃうんですよ。身体をいたわりながらまたお盛んにヤレるようになるまで、再び一苦労があったりするわけです。

 それを思えば旦那さんだって「てめぇ、俺の女房処女に戻しやがってぇ!!」とか怒るかもしれないし、奥さんの方だって「アンタのせいでまた破瓜の痛みを味わわなきゃいけなくなったじゃないの!!」って怒っちゃうと思うのです。


 もしかしたら奥さんが処女に戻ったのをきっかけに浮気に走る旦那とかもいるかもしれません。だって現実世界にだって奥さんが妊娠したり病気になったりして、エッチできなくなったせいで浮気に走っちゃう男はいるわけですから。

 それどころか、奥さんが処女に戻ったことで離婚しようとする旦那も出るかもしれませんね。


「見てくれ!彼女は処女のままだ!!

 私たちは結婚式はあげたが、今日まで夫婦の営みは無かった。

 だから離婚する。いや、そもそもこの結婚は無効なのだ!!」


 などと主張して飽きた女房と別れて別の女と結婚しようと画策するなんて、ありそうじゃないですか?

 実際、史実のカスティーリャ王エンリケ四世は「不能王」という異名で知られていますが、結婚13年後に「妃とは夫婦の営みが無かったから結婚は無効だ」と訴え、実際に離婚してますからね。処女膜さえ再生してしまう治癒法が存在するなら、飽きた女房をわざと処女に戻してしまってエンリケ四世と同じように「夫婦の営みは無かった」なんて言い張ることも可能になってしまうわけです。それが実際に通用するかどうかは別として。


 しかし、逆に処女膜をいつでも手軽に再生できるような世界だと、処女性に対する評価とかどうなるんでしょうね?

 結婚前の女性が他でエッチしてても、治癒法で処女膜再生できるから結婚相手にバレずに済みますよね?

 日本の場合、処女を重視する価値観はキリスト教とともに入ってきたものでそれ以前は処女を重視する文化は無かったという説もあります。「夜這よばい」という風習が各地にあった以上、花嫁が処女であることに拘る方がおかしかったのかもしれません。


 男性が処女をありがたがる理由は、1人1回限定という希少性と、その女性を自分だけのものにしたいという独占欲を満足させることができるからであろうと考えられます。ほかにもあるかもしれませんが…しかし、治癒法がある世界では「1人1回限定」という希少性は成立しませんよね?


「昨日の女、だったんだよ~」

「え?じゃねぇの?」

「え、違うって、マジ初心うぶだったし~」

「え、アイツ、〇〇の元カノだろ?」

「おぅ、〇〇の奴、『毎週ヤリまくりだ』って自慢してたぞ?」

「ウソだろ!?」

「バッカお前ぇ、あの歳で経験無いわけないだろ!?」

「そうとは限んねぇじゃん!?」

「何夢見てんだよ?

 だいたい偽物でも真物でも処女なんてやたら痛がってメンドクサイだけじゃん。」

「だよな~?非処女の方がサバサバして面倒が無くていいよ」

「え~、でも処女の方が良くね?」

「だいたい、男と別れるたびに処女に戻る女って、何か重いよな~?」

「そんだけ自分の事思ってくれるって事じゃねぇの!?」

「てか別れるたびに処女に戻ってにされちゃうわけだろ?」

「だよな?平気で女ってことだよな?」


 というような会話があったりするかもしれません。


 でも純潔を重んじる価値観があれば、やはり処女性がありがたがられるのでしょうね。それでもって、女性は結婚(特に再婚)する時に治癒法を使って処女膜再生する文化とか出来ちゃって、女性はそのたびに「あぁ~、また初体験すんのかぁ」とかウンザリしちゃうんでしょうね。


「もぉ~、母さん、何でまた処女に戻んなきゃいけないのぉ」

「しょうがないでしょ、これから彼氏さんにすべてを捧げて一緒に生きていきますっていう気持ちをこめて、処女に戻るのよ。

 だいたい、アナタみたいにバツ付きの女をお嫁さんに貰ってくれるんだから、それくらいありがたいと思いなさい。」

「彼氏クンの事は好きだけど、それとこれとは別じゃない!?

 アタシ、破瓜むちゃくちゃ痛いんだけど」

「誰だって痛いわよ。みんなガマンしてんだからアナタもガマンなさい。」

「痛いモノは痛いのよ!何で何度も何度も女ばっかり痛い思いしなきゃいけないのよ!女って絶対損よ!」

「何度も破瓜を繰り返すのはアナタが悪いんでしょ!?

 普通の女は何回も繰り返さないわよ!

 そんなに嫌なら今度の彼氏さんは大事にしなさい!!

 次、また別れたら承知しませんからね!?」


 結婚相談所の条件に「処女再生不要」とか「非処女可」とかいう文言があったりするんじゃないでしょうか?わざわざ処女膜再生しなくていいですよってことで…。


 逆に男性は処女と当たる機会は現実世界より増えるわけですし、結婚後に奥さんが処女に戻っちゃうこともありうるわけだから、男性は処女相手でも労わりながらエッチできるテクニックというか甲斐性みたいなものが求められるようになってるかもしれません。

 童貞にはキツイ世界かもしれませんね。

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