マルタリク(異世界)童話 〜植物編〜

ろくろく んよちい

パルマの花言葉

――むかし、むかし。ある国にパルマという女の子がいました。

パルマにはとても大切にしている宝物がありました。

それは彼女が10歳の誕生日に母からもらったハンカチでした。


 パルマの国では10歳になった子供に親がハンカチを贈る習わしがあります。送るハンカチには親(保護者)がハンカチにひとつだけ刺繍をするのです。

 果物や花などの植物、動物や星などたくさんある柄の中から1種類だけを選んで縫うのです。がらには一つひとつ異なる意味や願いが込められています。例えば花なら”花言葉”の他に”華やか”に、植物の芽は”成長”を、星は”輝かな未来”など。


 パルマのハンカチには植物が刺繍されていました。それはパルマと同じ名前の「パルマ」という大きな花を咲かせる植物でした。「パルマ」の花は同じ株から異なる色の花が咲くことから”可能性”や”たくさんの道”、”未来”などとさまざまな意味が込められています。


 パルマのお母さんはちょっと裁縫が上手とはいえないような人でしたが、それでも不器用ながらパルマのために時間をかけてこのハンカチを作ってくれたことをとても嬉しく思っていました。


 パルマには今年10歳になる娘がいます。母親譲りなのかあまり裁縫が得意とは言えないパルマでしたが、母からハンカチをもらったあの日のことを思い出しながらひと針ひと針丁寧にハンカチに刺繍をしています。




おしまい。


▽▲▽▲▽▲

マルタリク(異世界)植物図鑑

植物名:パルマ

形態:多年草 低木(種から花が咲くまでに5年ほどかかる)

分類:庭木・花木

特性:常緑性、開花時期が長い、同じ株から異なる色の花が咲く、暑さには強いが寒さには弱い

用途:主に観賞用、一部地域では薬草として用いられる


名前の由来:マルタリクのとある国で信仰されることの一つで、この地を支える大地、水、風、火、光、闇などを生み出したとされる母なる恵みのことを「パラルマラル」と呼ぶことからその名に由来する。花の色は大きく分けると6色でちょうど恵みの数(大地、水、風……)と同じなことから、という説もある。

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