大学生活における食の在り方、暇の使い方に関する示唆に富んでおり、暮らし指南の書としても読み継がれて欲しい名作。何かに困っている大学生が居たらぜひ本作品を薦めてみてほしい。どんな困難もカレーが優しく包み込んでくれるだろう、と、まあ、そう思わせてくれる小説である。
カップ麺ミーム、マッシブ野分(※台風のこと)、中の上辛カレー、カツカレー攻略手順二十一手詰、、、 等、知性と諧謔に富む筆者の独特な言葉使いにも終始笑わせてもらった。
小説の舞台になっているのはかつて大阪大学箕面キャンパスに屹立していた男子寮ー向陽寮かと思われる(作中では浪速大学昇陽寮)。大学移転に伴い向陽寮は姿を消すことになったが、かつてそこを覆っていた空気感が小説という形でありありと再現されたことを元寮生として寿ぎたい。
ならば、ここに展開される物語はその魅力を最大に引き出す、ライスに違いない。(パン派やナン派やチャパティ派には恐縮だが)
大学生活というゆるりとした時間の中で描き出されるのは、独り暮らしゆえの過ち、人物評に妙に納得してしまう食事作法、こんな奴居らんやろなカレーに憑りつかれた登場人物たち。
抜きだせばいかにも混沌としているのに、読んでみたなら驚くほど筋が通っているのは調理人のカレーにかける情熱の成せる業なのか。
惜しげもないユーモア、言語センスをスパイスに、知識・教養に裏打ちされた文章で見事盛り付けられたこの『カレー夜話』、大変楽しくいただけました。
ちなみに私は、水を切ってレンジで温めた絹ごし豆腐にコンビニのカット野菜を乗せてカレーをかける派です。