第57話 エルフィス④
「そういえば――、アイテムっていうのは結局ないのかしら」
猪貝がこうつぶやく。
確かに俺たちのもともとの目的はアイテムを回収することにあったはずなのだが、なんやかんやあって目的を忘れていた。。
「確かにそうだ。エル、なにか珍しいものとかってここにあったりしないの? あるんだったら――」
「そんなもんないぞ。あってもそうじゃな、儂との出会いくらいかの?」
「いや、確かに出会えたことはめちゃくちゃメリットあったけど、そういうことじゃないんだよなぁ」
「じゃぁ、逆に聞くがの、どんなものが欲しかったのじゃ?」
「無制限にものを入れられる袋、とか、炎をまとった剣みたいなさ」
俺の話を聞きながら腕を組み、うーーんと唸るエル。
「確かに、そういうものは儂の世界にはある。あるんじゃが……」
「じゃが?」
「今は持ってないんじゃ。すまんの」
「もってたの⁉」
エルは、俺たちが驚いたことに驚く。
「うむ。それは儂の世界ではふつうに売ってての。よぉーく考えてみぃ。転移の技術があるんじゃ。それくらいあっても不思議じゃなかろうて」
「じゃ、じゃあ、この世界で大切にあがめられてるのって――」
「儂の世界の人間の“落とし物”じゃろうな」
えぇぇぇ。そんなものが普通に売られてるって異世界すっげぇな。
ん? てかそれだったら――
「エルの世界に戻れれば簡単に……」
「そんな簡単に戻れたら苦労しないのじゃ」
そういうと、エルはいろいろなことを話し始めた。
まず、門は自然と、この世界に転移したわけではないということ。門単体で転移することはありえないから誰かが、何らかの目的をもって俺たちのいる世界に送った、もしくは一緒に転移してきたのだろうと。
「じゃぁ、ダンジョンを逆にさ、元の世界に転移させればいいじゃん」
来たのを元通りにすれば、ダンジョン内にいるエルも元の世界に戻れる。
「やろうと、思えばできる。が、そのためには時間と、労力、そして道具が必要になってくるのじゃ」
転移をするには、出発点には何もいらないらしいのだが、到達点には
「じゃから、おぬしらのいう
確かにダンジョンは現状日本にしか発現していない。ということは、何者かは、日本にいるということなのか?
「最悪
「ちょ、ちょっと待って今の話の中でスルーしてたけど、もしかしてダンジョンをこの世界から消すってこと?」
「そうじゃが? 何か不都合なことでもあるのかの?」
「だって、ダンジョンのおかげでいろいろと便利になってるのに、なくなっちゃったら――」
ダンジョンは、俺の世界では、”希望”なのだ。そしてダンジョン以外何のとりえもない俺にとっても。
「本来あってはいけないものがある、という状況はよくないのじゃ。今の状態では何の問題もないのかもしれないが、そのままにしておくと歪みはだんだんと蓄積し、この世界を侵し始めるかもしれん」
「じゃから儂の使命は、元の世界にいたものとして、こいつらをもとに戻すということあると思っておる。悪意を持った何かの尻拭いをせねば、とな」
固有スキル【ドロップ】が使えないって言われてパーティから追い出されました。でも、スキルの本当の使い方がわかったので強くなります。 白洲大知 @turugashima
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。固有スキル【ドロップ】が使えないって言われてパーティから追い出されました。でも、スキルの本当の使い方がわかったので強くなります。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます