第56話 エルフィス③
「そういえば、ステータスボールのことを気にしていたけど……、いったい?」
「あっ、それ私も気になってたの。だってあんな真剣に聞いてたから……」
別にステータスボール自体に疑問を持つことは何ら不思議ではない。確かにそれなりの大きさの黒い謎の玉があったら気になるのも当然だ。
だが、エルのステータスボールに対する行動、というか、表情は何かを知っている、もしくは何か重大なことが起きていることを暗示しているかのように思われた。
「似たような球が儂のいた世界にも存在しておっての。まぁ、それはこれとは違って透明なんじゃが。それとあまりにも酷似しているからまさかとは思ったんじゃが……。儂の杞憂じゃったようじゃ。忘れてくれい」
なんか含みを持たせたような発言。忘れてくれと言われれば言われるほど、忘れられなくなる。
そして、透明でステータスボールに似た球か。
どこかで見たような気がするけど、どこで見たのだろうか? 思い出せそうで思い出せないのが、どこかむず痒い。
「とりあえず、儂のほうは用が済んだことだし、この球は返しておくとするかの。ほれっ」
そういうとエルは、俺に向かってステータスボールを放り投げた。
いきなりの行為に何の用意もしていなかった俺はあたふたして俺の手の上でステータスボールが躍る。
その様子を見て猪貝がクスリと笑う。
「うおっ。おっとっと。いきなり投げないでくれよっ。落とすところだったじゃん」
おそらく落としても割れたり、壊れたりはしないのだろうけど、なんか怖い。
「すまんすまん。ところで、それを使うところを見せてくれんかの?」
「猪貝にも同じこと言われたような気がするけど、やっぱ気になるものなの?」
「そんな面白い能力があったら誰だって気になるわい」
「そういうものなのか……。じゃぁいくよ」
俺は、いつもより一回り大きいヌシのステボを胸にあてた。まぁ、大きいからと言って特段変わったことはないのだが。
スゥっと吸い込まれるようにして黒い球は胸へと消えていった。
《ステータスボールの消費を確認》
「――この部分は違うんじゃな」
「えっ? なんか言った?」
シスさんと声が被ってよく聞こえなかったが、エルが何かをボソッと言っていたのだけはわかる。
「いいや、なんでもないわい。続けてくれい」
「ステータスオープン」
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ステータス
田中秀明
レベル : 1
HP : 3755/3755
MP : 4550/7025
SP : 0
スピード : 5490
攻撃力 : 1195
防御力 : 1095
ラック : 85
―――――――――――――――――――――――
――――――――――――
固有スキル
【ドロップ】
所有スキル
【分裂】Lv.100、【ヌルヌル】Lv.7、【風魔法】Lv.2、【岩魔法】Lv.3、【跳躍強化】Lv.1、【脚力強化】Lv.2、【炎魔法】Lv.2、【反響定位】Lv.5、【回復阻害】Lv.1、【雷魔法】Lv.1
――――――――――――
――――――
デンキオオヌシウナギ
HP : 2000
MP : 1000
SP : 0
スピード : 500
攻撃力 : 600
防御力 : 500
ラック : 50
――――――
「ヌシってこんな強かったのか。よく倒せたな俺」
ステータスが今までのモンスターと加えて段違いに高い。
「何か新しいスキル手に入ったの?」
俺のステータスを見ることができない猪貝が興味津々で聞いてくる。
「【雷魔法】だな。結構スキルのラインナップがよくなってきたぞ」
そんな感じに俺と猪貝がステータスに関してワイワイやっているところで
「ふうむ。やはり“似ている”な」
そうエルが小さくつぶやいたのを今度は聞き逃さなかった。
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