2人の行く先に、良い風が吹きますように

海と龍の星アルマナイマ、そこに暮らす海洋放浪民セムタム族の文化を、星の外から入ってきた側、言語学者ドクター・アムの目線で描いた「博物誌」シリーズ。
今回は書き手のこだわりを感じる、食事や食べ物に関する描写がふんだんに楽しめる物語です。
誰かといのちを「いただく」行為を共にする、という情景が、頻繁に登場するアルマナイマシリーズ。
高価かつ非常食となるという団子を軸に、ドクター・アムの瑞々しく時に危うさのある感性は、今回、「自ら越えるべきではない一線」で幾度も揺れ動いています。
確信できるほど自惚れてはいないというものの、トゥトゥとの間にはお互いにある種の温かい感情が交錯していることは明らかなのに、踏みとどまろうとするのは究極の学者肌というかなんというか、なドクターが切ないような微笑ましいような。

そんなドクターとトゥトゥ、2人の行く先に、良い風が吹きますように。