第3話 HPに極振りする③
キングスライムを打ち破ってからの俺は、もはやゾーン状態であった。
ただただ出会ったモンスターを殴るか改悪スキルで強引に突破。駆け引きなんてもの、そこには存在しなかった。
「これで……ラストぉ!!!」
たまたま出会ったシルバーデビルの溝を殴り飛ばす。
《経験値が一定に達しました。レベルが42上昇します。》
《レベルアップに伴い、ステータスポイントを3200配布されました。》
《シルバーデビル討伐に伴い、ドロップアイテムとして『煉獄の衣』『魔石:B級』を手に入れました。》
「相変わらず凄いな………ステータスポイント3200って。」
色々なモンスターを倒してみたが、毎度毎度大量のモンスターポイントが配布される。
少々振り分けるのが面倒なため、あれ以来全てHPに振り分けている。
「今の俺のHP、81000だぞ?もうこれ最強種とかよりも強いだろ!」
魔王軍の幹部になるとか言ってたけども、もしかしたら既に魔王よりも強い可能性すらある。そのくらい能力値が異常なのだ。
「別にHPと防御力の管理さえ怠らなければ、負けることなんて無いんだよな。だって俺の防御力、素で5000とかだし。」
経験値モンスター神説。負ける気がしねぇ………
「そろそろ街とか探してみるか。いい加減モンスター狩り続けるのも飽きてきたしな。」
街の位置は大体把握している………それに、俺の恐ろしさを理解したのか、モンスターが俺から逃げ始めている。
「敏捷を6000くらいに調節して………」
(流石に数値が高すぎたかな?)
思いっきり踏み込み、力強く飛び出す。
「………っ!?!?」
すると、自分の速度に身体が反応しきれずに身体ごと空中へと吹っ飛ぶ。
「おかし過ぎだろぉ〜!!!」
早すぎてなんも見えない。風すら感じないレベルだ。
いや、風は感じる………落下を通して。
「まずいな………このままだと座標に指定したデカめの建物に突っ込んで─────」
真下に見え始める建物。おそらくは学園とかだろうか?
「って、冷静に考えてる場合じゃなかった〜!!!」
勢いを止めることなく落ちていく。
俺の力ではどうすることもできない。
「あっ、死んだな。」
ドッッゴン─
結界やらなんやらを貫通しながら、そのまま建物の天井をぶち抜いてしまう。
だが、幸いなことに俺の防御力を突破する程の威力は無かったようだ。
「な、何事ですかぁぁ!!!
わ、我らが伝統あるフェリス学園の天井がぁぁ!!!」
「いや〜、マジですんません。俺だって悪気があった訳じゃないし。」
なんか無茶苦茶厳しそうな女教師に捕まってしまった………弁償とか言われても金が無い。
「そんじゃ俺はこれで。」
「お待ちください!!」
ん?さっきの女教師とは違う声………
「どなたかは存じませんが。
俺は天涯孤独の一文無し………損害賠償は支払いませんよ?」
「………その損害賠償と言うものはよくわかりませんが、話があります。」
話ねぇ………面倒ごとは異世界に来てまで巻き込まれたく無い。
「ですから俺は急いでいますので────」
「歴史あるフェリス学園の天井を破壊しておいて、安易帰すとお思いですか?
〝炎よ円環を成せ。全てを焼き尽くし、紅蓮の業火は飲み込まれん!!〟〝炎熱地獄〟」
見知らぬ女がいきなり魔法をぶっ込んできた。しかし、俺はモンスター達の高火力魔法を何度か受けたことがある。
わかったことは、この世界の魔法は防御力を貫通できない………つまりは防御力が高ければ防げると言うことだ。
(まぁ一応受けてやるか。)
「〝煉獄の衣─────〟」
先程シルバーデビルがドロップした煉獄の衣。なんか紅くてカッコいいマントだが、効果を見た感じかなり強力だ。
まず防御力への補正………そして炎属性への完全耐性付与。
「………もう充分か?俺は急いでいるんだが。」
「そんな………アイリス様の上級魔法が効いていない!?」
アイリスって言うのか………全く、いくら学園の天井を破壊したとしても、普通なら即死レベルの魔法を
割りかし威力も高めだったぞ?
「ちっ、私程度の魔法では、一ダメージも与えられませんか………」
「今舌打ちしたよな?」
「ですが、私がここにいる限り貴方が私の愛する学園を破壊することだけは許さない!!」
「だから誤解だっての………破壊したのは本当だけども。」
なんか俺が侵略者みたいな扱い方されてるんだけど………凄く不快だ。
確かに破壊したことは謝るが、あの程度のダイブで壊れる結界しか貼れないコイツらにも問題があるはずだ。
「謝るから辞めにしないか?他の生徒にまで被害が出るぞ?」
「な……っ!!
生徒を人質にして私を痛ぶろうと言うのか!?クッ………私の体は自由にできても、心まで自由にできると思うなよ!!」
「だから違ぇわ!!」
なんだこの女………マジで気味が悪い。
もしかしてあれか?俺を
「とにかく、この学園の最高責任者を出せ。お前と話しても埒が明かん。」
「それなら、私が最高責任者だ………この学園の理事長を務めている。魔王軍幹部が一人『千変万化』のアイリスだ。
そろそろ真面目な話をしようじゃないか。」
「………………は?お前みたいな雑魚が幹部?」
思わず口に出てしまった。
急に口調が変わったことも驚きだが、まさかこんなコスプレ女が魔王軍幹部だと?
「ハハハ。一応私の魔法には腐食効果が付与されているのだがな………貴様には今ひとつ効いていなさそうだな!!」
それ本当に笑い事で済ましていいのかよ………
「あんたみたいな奴が理事長とか………この学園も終わってんな。」
「いくらでも言いたまえ。私の魔法を完全に無効化した貴様には、それを言うだけの権利がある。」
「全くだ。これに免じて、天井の件は無しってことで──────」
「それは無理だ。あの結果は私が三年間かけて貼った一級品でな。金貨にして約6000枚もの価値がある。」
「き、金貨6000枚!?」
日本円で六億だと!?あの程度の弱弱結界がか!?
「あ、
「その事だが、お前には二つ道が残っている。」
「二つ?」
「あぁ………一つは、借金を返済するまで鉱山で働くこと。
そして二つ目は、この学園で講師として働く事。」
「講師?」
「そうとも。貴様は生憎私より強そうだしな………生徒に教えるだけの才はあるだろう。」
鉱山で働くのはまず難しい………俺は肉体労働を嫌う。
「ちなみにだが、住み込みはできるのか?」
「可能だ。私の権限で許そう。」
借金返済に何年かかるかはわからないが、住み込みでおそらく環境は適当。
「先に言っておくが、俺のことは親愛なる魔王様とかには伏せておけよ?後、天井の件も秘密で頼む。」
「それは少し難しいかもしれないが………わかった。貴様を講師として雇おうじゃないか。では早速今日の私の授業を代わってくれ。」
ん?
「おいちょっと待て。まさかアンタが休みたいだけじゃないだろうな?」
「そうに決まっているだろう?わざわざ私が授業をしなくても、一組の生徒は充分強い。
あれ以上強くなられても返って対応に困ってしまう。」
ほんとにそれでいいのかよ………アンタそれでも理事長か?
「本当に大丈夫なんだろうな………教師用の服とか無いのか?」
「あぁ………それなら男子更衣室に死ぬ程余っている。好きに使うといい。」
死ぬ程男子更衣室に教師用の服が余ってるのもどうかと思うけどな?
経験値モンスターはクリティカル一撃で死ぬので、信じられないくらいHPを極振りしました。 @2098756
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