すぐれた地球統治はおれのもの!

ちびまるフォイ

この世界は誰のもの?

この一行を読み終わるよりも早く、エイリアンは地球を支配してしまった。


『地球生物のみなさん、この星は我々エイリアンが征服しました。

 これからは我々エイリアンにより統治されます』


人間たちは絶望し、エイリアンによる地球の支配がはじまった。


エイリアンはまず汚れきった環境をキレイにするところから始めた。

地球にはない優れた技術で海をキレイにし、緑を再生していく。


かつて絶滅した動植物も復活させて地球はかつての豊かさを取り戻した。



次に、人間を含めたすべての動物の生活を良くしようとエイリアンは働きかけた。


あらゆる紛争はエイリアンの超技術により一瞬で根絶され、

貧富の差も身分の差別も優れたエイリアンの手法によりなくなった。


すべての動物はエイリアンが来る頃よりもずっと幸せになった。


「エイリアン様、ばんざーーい!」

「いだいなる指導者! エイリアン様ーー!」


エイリアンは大人気となったが、一方でエイリアンによる統治に不満を感じている人もいた。


「ふん、なにがエイリアンだ。もともとこの星は人間のものじゃないか。

 いきなりやってきたよそ者が我が物顔しやがって……」


「父さん、そんなこというとエイリアンに聞かれちゃうよ」


「知ったことか。いまいましいエイリアンどもめ」


息子をはじめとする若い人たちはエイリアンに肯定的だったが、

父親の親世代はぽっと出のエイリアンに不満を覚えていた。


食卓を囲んでいても父親の口からはエイリアンの悪口ばかり。

息子はなんだか家にいづらくなって、一人暮らしを始めるようになった。


すると、息子の家に1通のエイリアンからの手紙が届いた。

手紙に書かれている場所にいくと、そこはエイリアンの作った監視塔だった。


『やあ、よく来てくれたね人間』


「あの……僕はここでなにを?」


『君を人間自治区A-32の担当にしたいと思っている。

 人間を監視するだけの楽な仕事だよ。悪くないだろう?』


「そりゃ条件は悪くないですが……どうして僕なんです?」


『君はエイリアンにも人間にも偏見がない。

 だから人間の間違った行動をフラットな目で見られると思ったんだよ』


父親だったらエイリアンのもとで働くなんて!とちゃぶ台返ししていただろうが、

息子はとくに相手が誰であっても気にしなかった。


「わかりました、ここで働きます」


『ありがとう、感謝するよ』


エイリアンは息子に仕事のやり方を丁寧に教えた。


緑が少なくなってきたら雨を降らせるだとか、

困っている動物が増えてきたら悩みを解決するだとか。

そして最後に。


『もしも、この監視塔に悪いやつが襲ってきたら、このレーザー銃を使ってください』


壁にはゴツい、オーバーテクノロジー丸出しのレーザー銃が用意された。


「悪いやつって……そんなのいるんですか?」


『ヘイトを貯めないように、監視担当を人間さんにしていますが

 やっぱり今でもエイリアンによる統治をよく思わない動物もいますからね。

 我々としても、あなたを失いたくないと思っています』


「は、はぁ……」


息子は監視塔での仕事をはじめた。

仕事にも慣れてきた頃、監視塔の監視地区で紛争を検知した。


「もう! どうしてこんなに平和なのに紛争しようとするんだ!」


息子は呆れてしまったが現場に向かうことにした。

そこには武装した父親とその仲間たちが立っていた。


「と、父さん!? こんなところで何しているんだよ!?」


「お前こそいったいどうしてここに」


「僕はあの監視塔で仕事しているんだよ。

 ここで紛争の空気を検知したから辞めさせに来たんだ」


「辞めさせる? いいか息子よ、これはエイリアンから地球を取り戻すチャンスなんだ」


「どうするつもりなの……?」


「あの監視塔から入って、エイリアン共になまり玉をぶち込むのさ。

 そうすれば再び地球は人類のものになる。

 それにエイリアンの技術も得られれば一石二鳥だ」


「どうしてそんなことするんだよ!?

 今はエイリアンによってこんなにも地球は良くなったじゃないか!」


「そんなことは問題じゃない! エイリアンに支配されてることが問題なんだ!」


「エイリアンから地球を奪い返して、それからどうするんだよ!」


「そんなことは作戦が成功してから考える。

 いいからそこをどけ。さもなくば息子でも撃つぞ。

 今じゃお前もエイリアンの手先なんだからな」


「どうしてそんなに世界の主導権を握ることばかり求めるんだよ!」


訴える息子の額に銃弾がめり込んだ。

撃ったのは父親ひきいるレジスタンス仲間のひとりだった。


「隊長、こいつはきっとエイリアンに洗脳されていたようです。作戦を始めましょう」


「そうだな。全員、とつげきーー!!」


監視塔から侵入したレジスタンス達は、管制塔にいるエイリアンを老若男女区別なく皆殺しにした。

もう二度とエイリアンによる支配を受けてたまるかという強い決意が心を冷たくした。


「みんな、聖戦は終わった! 人類の大勝利だーー!!」


「「 やったーー!! 」」


人間はふたたび地球の支配権を手にして歓喜した。


人間はエイリアンが残した超技術を使って、

エイリアン統治していたときのように自然を豊かにし、あらゆる格差をなくし続けた。


人間を含むすべての動物には食べ物が分け隔てなく与えられ、

すべての生物は地球の中で幸せにくらせるように整え続けた。


「ああ、やっぱりこれが地球のあるべき形だ」


父親は管制塔で人類の勝利をしみじみと感じた。




数日後、地球の支配権を取り戻そうと

動物たちの反逆が行われることなど知るよしもなかった。

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