まず「楽園」について。決して描写がくどいわけじゃないのに、とても色鮮やかに思い浮かべることができました。総天然色というか……アンリ・ルソーの絵のような世界を想像しながら読みました。不思議な鳥たちのそれぞれの思惑が交差する場面も、(いい意味で)とても生々しい。存在しない幻想的な異世界と、身近にいそうなキャラ。ぐいぐい物語に惹き込まれていきます。
そして、終盤。作者様の構成の上手さが光ります。大きな結末に向かって物語が綺麗に纏まっていき、とても胸が揺さぶられます。
「命」という重くて大きなテーマを扱ったものですが、そこで使われている表現がSF的で、そのためか、決して説教がましくならず、陳腐にならず、新鮮な気持ちで感動できました!
楽園、鳥たちの心情、命というテーマ……それぞれに活き活きとした表現で物語が展開していく、とても刺激的な小説です。
文字を並べるだけで、新しい世界が広がり、そして新しい登場人物に新しい命が吹き込まれる。小説を書くって改めて凄いなと思いました!
運命の恋。赤い糸。
細く脆いようで固く強か。貴方と私を繋いで離さないそれはどんな濁流、激流に呑まれても絶対に千切れたりしない。
――約束。きっと来世も会おう。
ずっと前世から持っていた貴方の感触。だからいつか会えたならば、すぐにその感触に気付けるはず。
「貴方と出会ったのはきっと偶然なんかじゃない、必然だった」
「ずっと貴方を探していたような気がする」
いつか出会ったときはきっとそんなことを言って顔を見ながら微笑むのかしら。
それともずっと焦がれていたその感触を早く確かめたくて貴方に抱き着いたりするのかしら。
――そもそも、運命ってどんな味なのかな。
思い巡らせ春風香る。
貴方の初恋は「運命」でしたか。
* * *
何の記憶も持ち合わせない少女が見知らぬ土地で力を持つ鳥に命を助けてもらう所から始まる今作。
様々な恋の形と、熱と、嫉妬と、葛藤と……。
崩落していく楽園の中、必死に生きながら自分の生きる途を探し、走り抜けていく少女の物語が展開していきます。
他の様々な鳥と交流を深め、時にハラハラさせられたり、ちょっぴり裏切られたり、胸に津波の様に感情が押し寄せてきたり。
様々なドラマの末に見出した少女の選択に貴方は何を思うでしょうか。
この文を読んでくださった貴方は是非、一度思い切って最後まで彼女とこの物語を走り抜けてみてください。
ここで多くは語りますまい。
巡る命、巡る物語。
その意味は最後の「約束」の果てを知るまで分からない。