第7話 ポンコツ自動車に乗って

 良いクルマってなんだろね。

 時速300キロ出せる奴?

 多少ぶつかっても壊れない頑丈な奴?

 豆腐運んで峠を攻めても溢さない奴?

 めっちゃ乗り心地がよくて運転してたら眠くなっちゃうような奴?

 うーん、欲しい。


 いやね、そんな高性能な奴は別に要らないの。

 ちゃんとアクセル踏んだらスピード出て、ブレーキ踏んだら止まりたいとこで止まれて、高速に乗ったら最低速度以上のスピード出ればそれでいいの。


 じゃあどんなクルマは困ったクルマってどんなの?

 ブレーキ効かない。

 アクセル踏んでも進まない。

 スピード調整が出来ない。

 フロントガラスが曇ってて前が見えない。

 ライトが付かない。

 いろいろあるやね。


 僕の身体もポンコツクルマみたいなものかもしんない。

 普段は良いんだよ。そこそこちゃんと走れてるからね。他の高性能なクルマみたいに高速で走り続けたりは出来ないけど。

 問題は雨が降った(トラブルがあった)時。

 いきなりフロントガラスが曇って(視野が狭くなって)周りが見えなくなる。

 ブレーキの効きが悪くなる(自分の制御が難しくなる)。

 アクセル踏んでも進まない(作業効率が落ちる)


 なんかね、目を瞑って自転車を運転してる様な不安に襲われるんだ。


「なんでそんな事してるの!」

「今はそんな事してる場合じゃないでしょ」

 ううう、ごめんなさい、ごめんなさい。

 今ね、必死で目の前の作業こなしてるの。

 容量いっぱい。

「なんで」って言わないで。

 その言葉が一番しんどい。


 このポンコツ。でもいいとこはあるんだよ。

 すげ〜乗り心地いいんだ。

 のんびりドライブには最適だぜ。

 どうせ乗り換えなんて出来ないんだから、しっかりメンテナンスしてちゃんと使いこなそうか。


 あ、ちゃんと取説読んどかなきゃね。

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自転車を漕ぐように ノーバディ @bamboo_4

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