3日で消える新素材
月澄狸
3日で消える新素材
かつてなく環境への配慮が求められる現代社会において、ある会社が「3日で消える新素材」を生み出した。
消えるといっても本当に消えるのではなく、微生物や昆虫による分解が素早く行われ、土に還るというものである。
紙のようなこの素材は人畜無害。微生物や昆虫に好まれる成分でできており、これを土や草のある場所に置いて重石を乗せるなどして固定しておけば瞬く間に分解され姿を消すのだ。
この新素材は試験的に菓子のパッケージなどに使われることとなった。分解にかかる「3日」という数字は多めに見積もったものであり、実際生物のいる場所であればこの素材の分解は1~2日で終わる。少し外に置いておくだけでアリやダンゴムシが群がってパリパリと解体を始め、しばらくして見るともうなくなっている。これは素晴らしくエコな素材だと、発売前からいくつものテレビ番組で特集された。
満を持して販売された新素材使用パッケージ。興味本位で買って試してみようとする人間が店に群がった。しかし人間客以上に売り場に群がった者がある。虫だ。
余程美味しそうだったのだろうか。ゴキブリやアリや小虫の大群が一気に押し寄せ、店頭に並ぶパッケージを食い尽くし、ついでに中身の菓子にも手を付けた。既に新パッケージを買っていた人の家の中などにも虫が集まり、町は大混乱となった。
3日で消える新素材は予告通り3日で店頭から姿を消した。
3日で消える新素材 月澄狸 @mamimujina
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