結
「俺が入院している間に、そんなことが……」
翌日、無事に退院した蓮は、すっかりめちゃくちゃになってしまった自分の部屋を片付けながら、雪乃にこの部屋で起きたことを聞いた。
「全然気がつかなかったよ……そもそも、見えてなかったし。見えるようになってからも、一度も見たことないし」
実際には、一度襲われかけた時に見ているのだが、寝ぼけていた蓮は全く覚えていなかった。
「もう見えるようになったんだから、気をつけてよ! レンレンに何かあったら、私……————」
雪乃は昨日のことを思い出して、また雪女の姿になりながら吹雪を起こしそうになる。
「ゆきのんストップ! 落ち着いて!」
蓮は雪乃を抱きしめて、落ち着くように背中をとんとんと叩いた。
「ごめん、レンレン……せっかく片付けたのに、また雪まみれにしちゃうところだったわ」
「そうだね、まぁそしたらゆきのんがまた手伝いに来てくれるから、ずっと一緒にいられるけど……」
「もう、レンレンったらぁ!」
急にいちゃいちゃし始める二人を、窓の外から文車妖妃が泣きながら見つめているとも知らずに————
(蓮様……せっかく、私、いつでも人間の姿になれるようになったのに!! ううっ……)
浅見の書いたラブレターから妖怪になってしまった文車妖妃。
一応、人間に害を及ぼす悪い妖怪ではないということで、祓われずにこの世界にいるものの、ストーカーがすぎるということで、蓮には一切関わらないことを約束して、祓い屋道場を後にした。
それでも、やっぱり蓮のことが忘れられず、今も窓の外から密かに見守っている。
おそらく今後も、こうやって蓮の姿を見にくるだろう。
そして、そのたびに仲睦まじい蓮と雪乃の姿をみて悔しい思いをするのだ。
(もっと早く蓮様と出会っていれば、私があそこにいたかもしれないのに————)
* * *
「ところで、浅見さんのラブレターってどういう内容だったの?」
「え? 知りたい?」
雪乃は浅見の書いたとってもポエムな……あの元ラガーマンに似合わないとっても可愛らしい内容を蓮に教えようと、スマホをだして、画面を見ながら書かれていたラブレターのポエムを口に出す。
すると、隣の部屋で作業していた浅見が走ってきて、雪乃を全力で止めた。
「ちょっと、雪乃ちゃん!! やめて!! そして、なんで覚えてるの!!?」
「え、覚えてないですよ。写真撮っておきました!」
「いつの間に!!!?」
現代っ子の抜かりない姿に、焦る浅見。
「さすが、ゆきのん! その画像俺にも送って!」
「うん、いいよ! レンレン!」
「やめろおおおおおおおおおおおお!!!!」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ浅見を見て、蓮と雪乃は大笑い。
蓮が戻った祓い屋道場は、いつも以上ににぎやかだった。
— 終 —
初恋ラブレター 星来 香文子 @eru_melon
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