八百万と科学の根幹が同じであることを歌で証明するような

個人的に好きなのは、

刃針から金魚生まるる手水鉢
真空や鳴神を追う太郎冠者

の二つです。
刃から金魚とくればもちろん血です。そしてそれが手水鉢につながるのであれば、必然的に、鮮やかなまでに、血がぬわーっと鉢のなかに広がる光景が目に浮かびます。文字の順を追うとすぐわかります。はっきりしていて素晴らしいと思います。
太郎冠者で有名なのは、水のにごっている底でもなければ、表面でもなく、水の中間をすくってこいと言われて掬いに行く場面があったと思いますが、地球と宇宙のあいだにある高高度の雷の世界を掬いに頑張る太郎冠者の姿が浮かび、実にダイナミックでわかりやすいです。
神々と科学を歌で融合する試みは興味深いし、神々は現象を観察した結果を受けての想像力で生み出されるものなので、根底は同じなのでしょう。