筑波研究学園都市

作者 千住

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★★★ Excellent!!!

 研究の風景を謳うという発想にまず感嘆させられまひた。科学と文学、一見遠そうな二つを結びつける飛躍の妙は、それぞれの句にも散見されます。特に端的に現れているのが、「源氏物語400℃開花説」。源氏物語と400℃開花説とを、時間の集積という共通項で並べています。解説を読んだとき、まさしくこれが俳句の楽しみだ、と思いました。
 他のお気に入りの句は「刃針から金魚生まるる手水鉢」「朝露や杜の観測器に参る」です。どちらも前者は一瞬を切り取った句ですが、鮮やかな赤のイメージが残光のように頭に残り、味わい深いものです。後者は少し幅のある時間を歌ったもので、日々の研究の中にどこか儀式めいた空気を与えています。
 どの句も、研究をただのルーチンワークにせず、荘厳な雰囲気をもって詠んでいるため、新鮮な世界へと連れて行ってくれました。

★★★ Excellent!!!

個人的に好きなのは、

刃針から金魚生まるる手水鉢
真空や鳴神を追う太郎冠者

の二つです。
刃から金魚とくればもちろん血です。そしてそれが手水鉢につながるのであれば、必然的に、鮮やかなまでに、血がぬわーっと鉢のなかに広がる光景が目に浮かびます。文字の順を追うとすぐわかります。はっきりしていて素晴らしいと思います。
太郎冠者で有名なのは、水のにごっている底でもなければ、表面でもなく、水の中間をすくってこいと言われて掬いに行く場面があったと思いますが、地球と宇宙のあいだにある高高度の雷の世界を掬いに頑張る太郎冠者の姿が浮かび、実にダイナミックでわかりやすいです。
神々と科学を歌で融合する試みは興味深いし、神々は現象を観察した結果を受けての想像力で生み出されるものなので、根底は同じなのでしょう。