スキャタード・ラブ

ジュン

第1話

「恋愛って幸せも感じるんだけどさ」

「なにか不満でもあるの?」

「不満ってわけじゃないんだけど。お互いを拘束し合うだろう」

「付き合うってなるとね」

「それってけっこう窮屈なものだよな」

「自分はソロプレイでいたいと?」

「というかさ、スキャタード・ラブもわるくないなと」

「スキャタード・ラブ?」

「スキャタード、つまり、散らばっているってこと」

「愛が散らばっているってこと?」

「周囲の異性を意識させてしまうような男/女さ」

「つまり、相思相愛の二人じゃなくて、周囲を魅了する人のこと?」

「恋愛感情が拡散していて、散らばっている。だから、スキャタード・ラブだ」

「それって未熟な恋愛願望じゃないかしら?」

「現実にはそうとも言い切れないと思う」

「なぜ?」

「『正統派』の根拠に基づいて結婚したカップルも、やがて、浮気だの不倫だの別居だのDVだの、果ては離婚するだとか、まったく『成熟恋愛』を維持できないなんて、ごまんとある」

「そうか……。ところでなぜ人は伴侶を求めるのかしら」

「生産/消費人口を確保するっていうのが国の本音だろう。他方、個人の理由は……」

「相手のことが好きだから?」

「それは幸せなケースだ。よくある理由は、『親がうるさいから結婚した』『世間体を気にして結婚した』『できちゃったから責任を取って結婚した』だけど、一番の理由は、『なんとなく結婚した』じゃないかな」

「確かに(笑)」

「そんなんだからさ、あえて特定の恋人を持たないで、周囲を魅了する『他人』でい続けるスキャタード・ラブに関心があるのさ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スキャタード・ラブ ジュン @mizukubo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ