同じあらすじでお話を書くという企画ものです。このお話は構成が素晴らしい。2回目のループから、「おや?」と思うと、それが叙述トリックであり、さらに物語の核をなしていくことが次へ、次へと深みを増しながら……その文構成の巧みさに目を見張りつつ、短いながら味わい深い物語自体の魅力に引き込まれていきます。作中に登場する曲の使い方も工夫が凝らされています。お話は、なんとも不思議な気持ちに包まれつつ、読み終えた時はとてもほっこりとした気持ちで満たされる。おすすめです。
恋をしてはいけない相手に恋をした。その人は、自分が知らない世界──月まで連れて行ってくれるんじゃないかと思っていた。「明子の未来を俺が制限してるみたい」彼はそう言って、別れを告げた。喫茶店にて、彼女は思い出す。私を月に連れて行って。つまりね、言い換えればね。かぐや姫のうたたねなのかもしれないな?