甘く包まれて

ジュン

第1話

「…………」

雫は、ベランダでクレープを食べている。

「独りで食べるクレープもおいしいのね」

雫はそう言った。

「彼、いま何してるのかしら」

部屋の時計は12時を過ぎていた。

「別れてちょうど1年だわ」

雫は続けて言った。

「去年もベランダでクレープを食べたわ。彼、きいたわ『イチゴとグレープどっち取る?』って」

「イチゴ!」

「じゃあ、イチゴ……」

彼、そう言ってイチゴのクレープの方をくれた。

「…………」

「星がきれいだわ」

雫はそう言った。

「いま、グレープの方を食べてる。あの時、彼が食べた方の」

雫は泣いた。

「『グレープの方は俺のだろ』って言いに戻ってきてくれないかしら」

雫は続けて言った。

「イチゴのクレープならあるわよ。2つ買ったから」



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甘く包まれて ジュン @mizukubo

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