最終話 答えは解なし
最終日、俺は朝の5時に目が覚めた。
何も起こらない、平凡な3日間だった。所持金の20万円も、ほとんど使う事が無かった。咲は俺のターゲットの証明をすると言っていたが、これで良いのだろうか?
煙草を吹かし、ぼんやりしていると、咲から心の声が届く。
(おはよう、ノン。エミリーは予定を変更して、始発の飛行機に乗って急いで帰ったよ。ノンの行動が余程ショックだったみたい。なぜあんなに自由に出来るのか理解に苦しむって。ノンに接触できて、永遠を手に入れる事ができたから、アメリカでポセイドンプロジェクトを広める事が急務だと言っていたよ。)
(咲は今どこにいるの?)
(家にいるよ。真菜も一緒だよ。)
(俺がターゲットのNだという証明はできたの?)
(今回はエミリーが証人になってくれたから。世界中にいる、霊力を持つ人達の為に役に立ちたいね。)
(俺はこれからどうすれば良い?お腹も空いたし、何か食べてから帰ろうかな?)
(駅で待ち合わせて3人で一緒にランチを食べようよ。話したい事もあるから。時間は11時で良い?)
(わかった。11時に駅で会おう。)
コーヒーショップが朝7時30分にオープンするので、それまで宿で時間を潰した。時間になり、宿を出て繫華街を歩いた。
こちらを見て、こそこそと話す女子高生達がいた。それを横目で見ながらコーヒーショップ入り、Aモーニングを注文した。喫煙エリアでくつろいでいると、ここでも俺を見ながらこそこそと話す二人組の若い女性がいた。
何者かにつけられている感覚だ。この感覚に覚えがあった。統合失調症の被害妄想だ。俺は予備に持っていた頓服を飲んだ。すると俺の思い違いだという事に気づいた。不安を抱え、時間になったので待ち合わせの駅に向かった。
駅に着くと咲と真菜が待っていて声をかけて来た。
「ノンさん具合が悪いようですけど大丈夫ですか?」
「ノン、取りあえずファミレスで休もう。ターゲットの証明をするためにかなり無理したからしょうがないよ。行こう。」
3人でファミレスに入りランチにドリンクバーをつけた。
咲が口を開く。
「ノン、お疲れ様。実はノンを確保して、永遠を自分達のものだけにしようとするグループが存在している事がわかったの。今回、ノンをおとりに、そのグループがこの地球のどこにいるのか、調べようと計画されたものなの。日本はあたしや真菜達がいるから安全なの。ノンに被害妄想が出て来たのは、このグループの存在があるからなの。わかっているのは、かなり強い霊力を持っているという事だけ。出来れば対立を避け、一緒に全人類が奇跡を手にするようにしていきたいの。」
「ノンさんの考えた心の方程式の答えは『愛』ですよね。愛の意味が大きすぎて混乱してしまいます。」
「俺の考えた心の方程式の本当の答えは『解なし』なんだ。どんなに大勢の人間がいても誰一人として同じ答えは無い。人生って死ぬまで答えが無いから面白い。だから『解なし』なんだよ。」
俺は帰国したエミリーの事を気にしていた。エミリーに接触したのは、ホテルでしゃぶしゃぶを食べた1度だけだ。どこで俺がエミリーに永遠を授けたのだろう。咲に聞くとそれが奇跡なのだと言った。
「心の方程式を解いてノンの存在を認識すれば、永遠を手にする事が出来るの。例え死んだとしても霊魂として永遠を手に入れる事ができるの。それが天の神様の啓示なのよ。だから死ぬのは怖くはないの。」
「世界中に産み落とされた命達は、もうエミリーくらいの年頃だよね。咲みたいに心の声を聴く力を人に授けているのかな。」
「うん、授けているよ。地球が1つになる日も近いよ。」
「争い事が起きる前にポセイドンプロジェクトを完成させたいね。真菜は元気が無いけれど大丈夫かい。」
「わたし心配なんです。霊力を持つ女性達が、おかしな噂をしているんです。」
「どんな噂なの。」
「ターゲットのNに抱かれると、不老不死を手に入れる事ができるって。そんな事実無いのに。デマを流してポセイドンプロジェクトを混乱させようとしているしか思えません。」
「誰がそんな噂を流してるんだろうね。」
「ノン、冴子だよ。オンリーパートナーができなくてよほど寂しいんだろうね。不老不死を誰よりも望んでいるのは冴子しかいないよ。」
「冴子ならほっとけば良いんじゃないかな。俺は咲と真菜がいれば、心が満たされるから。他の女を抱きたいという気持ちは無いよ。」
「ノンさん優しいから、女性に言い寄られたら断れないんじゃないか不安です。」
「真菜、ノンを信じよう。そしてポセイドンプロジェクトを完成させよう。」
*~*~*
そして五年後。ポセイドンプロジェクトが完成された。
人類全てに永遠が訪れた。死を恐れる者がいない奇跡を手に入れたのだ。咲と真菜のお腹には、新しい命が宿っていた。父親はターゲットのNだという事は誰にも知られなかった。
心の方程式の答えは『解なし』各々が命一杯生きていけば良いのだ。
咲と真菜の子供たちは宇宙を目指し、人類のリーダーとして活躍する事になるのだった。そのお話は別の機会にするとしよう。
今はただ、この幸せを堪能しよう。産まれて来て良かった。全ての人がそう思う地球にしよう。
では、再会出来るその日まで、お元気で……。
完
【あとがき】
最後まで読んで頂きありがとうございます。
終わり方が中途半端で申し訳ありません。それでも最後まで一生懸命書きました。
全くの素人ですので、その辺は大目に見て下さいね。
次の作品の事は何も考えていませんが、書く事を続けていきたいです。
その時は是非遊びに来て下さい。今はただ感謝の心で一杯です。
本当にありがとうございました。
龍神 昇
心の方程式 龍神 昇 @non39yesican
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