岡田斗司夫ゼミ:見ているが見ていない
〇岡田斗司夫ゼミ
岡田斗司夫ゼミはニコニコ動画やYouTubeで視聴でき、無料と有料部分があり、無料部分だけでも聞きごたえがある。
私がいちばん好きなのは「火垂るの墓」の回なのだが、岡田ゼミのせいで作品の見方がまったく変わってしまった。
原作者の
私も同じく見ることができないのだが、その理由は悲しすぎるからではなく、岡田ゼミのせいで怖くてしょうがないからである。
岡田斗司夫ゼミは、テキストをAmazonで購入することができ、一部はkindle unlimitedで読める。
「火垂るの墓」「かぐや姫の物語」の講義は、有料部分もAmazonで視聴した。
また、庵野秀明監督に関する動画が見たかったので、プレミアム会員にもなっている。月額2390円!
ジブリの中で「ホーホケキョ となりの山田くん」がいちばん好きなのだが、岡田斗司夫ゼミではまだ取り上げられていない。
あの作品の何を私は見ていないのか。とても気になる。
しかし、テレビで放映でもされないかぎり、講義をする予定はないらしい。残念。
〇見ているが見ていない
高畑勲ではなく、「火垂るの墓」を批評するとき、実際に映像で描かれているものを論拠にしなければ、説得力がない。
高畑勲がインタビューで語った内容であろうが、絵コンテに書き込まれている設定であろうが、それを裏付ける作品内の映像・音声がなければ、作品の批評からは切り離すべきである。原則的に。
作品内に証拠がなければ、それが作者のコメントであろうと、それは一人の受け手・視聴者の感想にすぎない。
言い換えれば、作者が何を言いたのか、作品の目的などというのは、作品それ自体とは本質的に関係がない。
作品は完成した時点で作者の手を離れ、作者の解釈は多くの解釈のひとつに過ぎなくなる。
作品に正しい解釈・見方などというものはなく、それぞれの見方があるだけだ。
作品は作品、作者は作者である。
だが、だからと言って、作者の作品に対する言及に価値がないとは言わない。
私たちが作品に触れたときに見逃しているものを探す手がかりとして、作者の言動は最重要のツールである。
作品内に裏付け・証拠のある作者のコメントや作品の設定は、作品を深く読み解く鍵となる。正しくではなく、深く。
スマートフォンでゲームをする時に、BGMとして「岡田斗司夫ゼミ」を聴くことがある。
とくに高畑勲の作品を解説する回が好きで、いかにただ漠然と映画を見ていたのか気づかせてくれる。
たとえば、「火垂るの墓」は反戦映画ではないと、生前に高畑は断言している。
それでは何を意図した映画なのかについて、岡田さんが映画の中で表現されている証拠を見せながら説明してくれる。
ここで大事なのは、高畑のインタビューや絵コンテなど、作品に映っていないものを根拠にしていない点である。
初期設定や絵コンテの書き込みを手掛かりにはするが、実際の作品と突き合わせて、作者が画面に提示しているものを根拠にしている。
高畑がインタビューで言っている。絵コンテに書いてある。
という段階で終わっている話もおもしろいが、それはジブリに関する都市伝説を聞いた時のおもしろさと変わらない。
岡田さんの推測に基づく分析も好きだが、やはり作品内に裏付けがなければ、それは一鑑賞者の想像に過ぎない。
もちろんそれでも十分なのだが、映像として提示されているのに、私が気付かなかったポイントを示された際の興奮には及ばない。
岡田さんの高畑作品の解説を聞いていると、自分が何も見ていなかったことに気づかされ驚く。
しかし振り返ってみると、私が「見ているが見ていない」のは高畑作品だけでなく、生活全般について当てはまる。
そこそこ反省し、少なくとも本を読む際には、前より注意深くなった気がする。
〇修羅の世界
作家は数年がかりで考えに考えぬいて作品をつくる。それに対して、一部の鑑賞者も数年がかりで考えに考えぬいて作品の理解につとめる。
私とは住む世界がちがう。彼らは修羅の世界に生きている。
本の感想:エッセイ 青切 @aogiri
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