謎の存在によって唐突に異世界転生させられ、望まず死霊術師として生きることを余儀なくされた、血を見ることもお化けも苦手な温和な主人公が、人でいることを諦められずに死霊術師としての力に振り回されながら、人の世界で賑やかに生きていくお話を描いた小説です。
世界の謎に迫ったり、壮大なストーリーがあったり、強大な敵がいるわけでもありません。
ひたすら墓穴を掘りながら、次から次へと起こるイベントに遭遇する主人公の、ドタバタ異世界コメディといったところでしょうか。
モブまで含めて魅力的な人物が多く、それに比例して巻き起こるイベントも豊富なため、次は何が起こるのか予想がつかずワクワクしながら楽しめました。
残念ながら更新頻度が低いこともあってか、小説の持つポテンシャルに比べて注目度が低いように見受けられますが、コメディ色が強い作品がお好きな方には安心しておすすめ出来るクオリティの小説だと思います。
日常とは言っても男子が好む展開が散りばめられている日常。そして和み系。カオスが少々。
ヘタレでお人好しな性格に死霊魔術師(リッチ)の特性が程良く混ざり、そんな性格の主人公が転生系小説で定番な主人公キャラたちと絡むことでいい感じに物語が展開していきます。最上格の死霊魔術師(リッチ)となったのに草食系男子にありがちなチョロゴンな中身は転移前と変わらず、そんな主人公と家妖精との日常も良き。思いやりに溢れた描写が良き。
広義ではこの作品もチート系小説だとは思う。だけど、ありがちなつまらないチート系小説だと単にチートだけで話が進むが、この作品では主人公が持っている憎めない性格や、目の前の問題を解決した後で起こる問題を見せることで自然な縛りプレイを実現している。その辺りの匙加減が上手い。
「えっ!あれがフラグだったの?」と回収が始まって初めて気付く展開も良き。そして、読み進めていくうちに絡み合うLUKと因果の絶妙なハーモニー、とは言えないスパゲッティ。けど美味しい。
1話1話の文量は多い方だけど、空行の入れ方や複数の括弧の使い分けが上手く読みやすい。人間味溢れるヘタレな心情が毎度突っ込まれる小気味良さ。(第124読了)
チートに酔いしれる主人公ではなく、チートに振り回されているようで、いないようで、どうでしょうという主人公。不死者になっても、人として平凡に生きたいと願いつつ、不死者の価値観で、微妙にシニカルな行動にもなります。物語も面白いが、主人公のリカルドも魅力的です。占い師の仮面(顔を変えてる)を被って数多の悩みを解決したり、色んな厄介事に巻き込まれたり。でも本人は静かに生きていきたいだけなのです。
スロースターター気味ですが、一度読んだら、きっとあなたも読み続けたくなるでしょう。
でも、読んでる人は、物語に集中しすぎて、評価するのを忘れていると思うのです。私はそうでした。