VよりR
生田 内視郎
VよりR
「もう、まーたゲームばっかりやってる」
土日連休初日の朝から折角可愛い彼女がお洒落してお宅訪問したというのに、私の彼のレオ君は先週買ったばかりの最新VR機に夢中だった。
「ごめんって、仕事溜まってて中々手付けらんなくてさ、俺だってコレ今日箱開けたんだぜ」
彼は私に向けて弁明するが、目にはVRゴーグルを嵌めているので微妙に私の向きからズレて誰もいない所に手を合わせていた。
「しょうがないご主人様でちゅねー」とペットであるレオン君の背中を撫でると、彼は答えるのも億劫だというように大きな欠伸を一つした。
「ねーそれいつ終わんの?今日朝から二人で狩りに出掛ける約束は?」と口を尖らせるが、彼は
「設定だけだからすぐ終わるよ」と言ったきり
十分近くも腕を右往左往させていた。
まぁ最近は本当に忙しかったみたいだし、ずっとやりたいやりたいと子供のように呟いていたから私としても彼にゲームを楽しんでもらうのはやぶさかでは無いが、流石に私のいない時にしてくれとは思う。
大体、オンラインゲームだかなんだか知らないが、架空の銃を手に顔の見えない相手と殺し合いなぞ何が楽しいのか
はぁー、とわざとらしく聞こえるようにため息を吐くが、どうやら彼の耳には入っていないようだ。
私はいつまで経ってもチュートリアル画面から進まない彼に見切りをつけ、鞍と手綱を持ち口笛を吹いてレオン君を散歩に誘う。
彼は巣穴から這い出て窮屈そうな翼を嬉しそうに広げた。
そうとも、折角のこんなにいい天気なのだ。
異族狩りにでも出掛けかなければ勿体ない。
この前新調したばかりのハンドガンのグリップと弾倉に入っている弾数を確認し、颯爽とレオン君に跨がる。
やるならやっぱりゲームよりリアルよね。
鞍を蹴り、レオン君が咆哮をあげ軽やかに空を駆け上がった。
──ここはイヴァリース大陸右辺に位置するヴァルボス皇国のラクロア国境沿い地点。
ここではつい十年ほど前から、異世界からやってきたという〝ニンゲン”という種族と土地の覇権を賭けた戦争をずっと続けている──。
VよりR 生田 内視郎 @siranhito
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます