第8話 駄菓子屋
それから時間が過ぎ昼休憩もそろそろ終わりの時間がやってきた。僕は部室の鍵を閉める必要があるので先に宇野さんを出てもらうことにしてもらった。
「それでは、これから迷惑を掛けますがこれからよろしくお願いします」
「迷惑だと思っていませんから気楽にやりましょ」
そう言うが宇野さんの表情は特に変わることがない。やはりまだ、僕と彼女の間には見えない壁が存在している。
沙耶ばあが出した条件をクリアするにはその壁を乗り越えないといけない。
ていうか僕はまだその大きな壁の前にある何重もの障壁にすらたどり着いていない。前回の時はその障壁はアクシデントで崩れ去っていたが二日経つと完全復活しており、距離感を感じるものになっていた。
これから僕は宇野さんに歩み寄っていかないといけない訳だが、正直言って辛く厳しい戦いの予感しかしない。あの敬語の状態で一緒に下校とか何の罰ゲームだよ。ただ息苦しいだけなんだよな。
まあ、それでも城に立て籠るお姫様を連れ出せというのが上からのお願いという名の命令である。
どうしてこうなったと嘆きたいところだが、首を突っ込んだのは僕からだ。だけど、ここまでの展開になるとは予想出来るはずがない。
まあ愚痴を言っても仕方ない。あの社交辞令のような会話も早めに卒業したいので、引きこもりのお姫様に宣戦布告でもするとしようか。
その宣戦布告というのも宇野さんからは気付かないだろう。まあそれでいいこれは今ここで言うからこそ価値があるから。
僕は先程までの堅苦しい雰囲気を無くすため目を閉じて一回深呼吸したのち僕は部室から出ようとしてる宇野さんを呼び止める。
「宇野さん!最後に一つ約束をしませんか?」
「約束ですか?」
「はい!約束です」
「その約束の内容は何ですか?」
宇野さんは一瞬考えるような仕草をした後、別にそこまで問題ではないと判断したのか内容を聞いてくる。
その様子に道は長いと分かってしまうので心に来るものがある。
「内容は簡単ですよ!僕は宇野さんがどうしようもなく困った時に必ず助けに来ます。」
「それでこちらは何をすればいいのですか?」
こちらを少し警戒するように聞いてくる。若干怒りの感情を読み取れるので多分地雷を踏んでいる可能性がある。
「僕に助かったと思ったのならば、一つだけ新しいことにチャレンジしてほしいです。勿論チャレンジの内容は宇野さんが決めていいです。」
内容を聞いた宇野さんはまた考えるような仕草をする。内容自体に怪しい所なく、その気になれば宇野さんは約束を破棄するような手段はいくらでもある。
宇野さんもその考えに至ったのか約束することはよさげな雰囲気を出している。
「私はそんなに弱い存在ではありませんよ」
その言葉には怒りの感情が込められていた。どうやら彼女の地雷を踏みぬいていたらしい。
さて、どうやって説得しようか。少なくとも宇野さんの不満を解消するような言い訳をしない限りはこの約束はしてくれなさそうだ。
「僕は宇野さんの事を弱い存在だと思っていません、だって宇野さんはみんなから完璧美少女と言われる人ですから、だけどどんなことがあっても大丈夫だと言いきれるほど強い存在でもないでしょ」
僕は事実を言うことにした。飾らずしっかりとした事実を言うことが宇野さんを説得するのに最適だと考えたから。宇野さんは基本的に理屈を優先させる傾向が強い。納得できる理由があるなら彼女は素直に認めるそういう人物だ。
僕の意見を聞いた宇野さんは納得はしたようで怒りの感情は感じない。
「ならどうしてそんなことをしようとするんですか?」
「宣言みたいなものです、実際に言葉にしたほうがやる気がわきませんか」
本音で答えた、勿論それ以外の考えもあるが言うのほどのものではない。宇野さんもなんとなく気付いているようだが、大丈夫だと判断したのか約束してくれた。
宇野さんと別れた後、部室の閉じ絞めの確認した後、更衣室に急ぐ。次の時間は体育の授業だったため急ぐ羽目になった。
ちなみに体育の授業では各自でやりたいスポーツを選んで行うものになっている。今だと、ソフトボールとバスケットボールの二択がある。僕はソフトボールを選択しており、宇野さんはバスケットボールを選択している。
非常に残念なことだが、ソフトバールは人気がなく人数が少ないためほぼ遊びになっている。ちなみに誠はバスケットボールを選択している。
現在は軽いキャッチバールをしている。
「優、どうして昼は居なかったんだ?」
ボールと共に僕に質問が飛んでくる。ボールはここまで飛んでこず途中でバウンドしたことで勢いと失って止まってしまう。僕はそれを取りに行く。
「
そう言いながら僕は投げ返す。僕に質問してきたのは
身長は160㎝前半ぐらいであり、体型がかなり細く弱々しいイメージがある。眼鏡をかけており、一応顔はいい感じで一部の女子から人気がある。
見た目通り運動神経はあまりよくないが、その分頭がよく、全国模試一位の中島健司といい勝負が出来るほどだ。ちなみにパソコンなどの方もかなり出来る。自分でWEBサイトを経営している。ただ、かなり効率重視の作りになっており、とても簡素なものになっていた。
「言っていない、おかげで誠の面倒を一人で見ることになった。」
誠は智弘の事をかなりイジルのでいつも迷惑そうにしているが、なんだかんだ仲良くしているのでそこまで嫌と言うことでもないらしい。
ちなみに智弘は迷惑そうに言ってはいるが、基本的に僕がいても誠の面倒は智弘がいるのでそんなに変わらない。
「それはお前が遅く来るからだろ、小休憩では話さないんだから」
「それは仕方ないだろ、早く来る意味がない」
智弘は効率最優先なので基本的遅く来る。なので連絡とかある時は昼にしている。
「そういえば今日は教室に人が全然いなかったが、優は何か知ってるのか?」
今日昼に集まるようなことがあったのか、記憶を振り返るが特にそう言ったことはなかった。
「特にそう言うことはなかったと思うぞ」
「そうか、ならなんでいなかったんだろうな?」
今の時間が暇のこともあり、普段ならこの辺りで話題を変える智弘だが、今回はもう少し話すらしい。
「いないといったが具体的にはどんな感じなんだ?」
「いつも見る男子のグループは居たが、女子のグループが居ない感じだったな」
男子の方はいつも通りで、女子の方がいないのか。それだけだと何が理由なの分からない。
「僕たちの事を飽きたかもしれないな」
「もともと相手にしてないだろ」
僕の冗談に厳しいツッコミをしてくる智弘、もう少し夢があってもいいのにと思ってしまう。
「だけどちょっと興味が湧いたな、後で詳しく聞こうか」
「優の悪い所だ、面白いからと言って無駄な労力を払い過ぎだ」
「そういうなって、付き合ってもらうぞ智弘」
そう言ってキャッチボールをやめて次に行くように指示が来る。僕たちは話をやめて授業に取り組むのだった。
それから時間が経ち今日の授業はすべて終わった。先生からの連絡事項の話も終わり、みんな部活やら遊びやらこの後することに向けて行動している。
宇野さんは部活に所属していないのですぐに帰ることが出来る。僕は一応所属はしているが現在は部長の都合で休みになっているので僕も早く帰ることが出来る。
それに大半の生徒は部活などでこの時間帯に帰る人がいないため比較的バレにくくなっている。
それでも全くいない訳ではないのである程度は警戒しておいた方がいい。一応集合場所については宇野さんに専用のアプリを入れてもらったので迷うことはないはずだ。
先に集合場所にいた方が色々と楽だろう、宇野さんも今は友達とお話しをしているので先に集合場所に着くことは容易だ。
そう思って僕は先に集合場所になっている所に向かう。
「優兄、なんかとても綺麗な人がこっちに来る!」
集合場所について15分程度経った時、椅子で座りチェスをしていた所に一人の子供がこちらに駆け寄ってきて言った。
「
「後でカロムで勝負してくれくれるよな!」
「ああ、約束だからね」
「今度こそ勝つ!」
悟は僕と勝負出来ることが相当うれしいのかとてもはしゃいでいた。
「悟うるさい!今いい所なの」
「ごめん、
悟を黙らせたのは現在僕とチェスをしているしている
先程まではしゃいでいた悟も好の一言で黙ってしまう。
「悟、あかりはどうしたの?優兄さんはその人が迷った様子ならあかりと一緒に連れてくるようにお願いされてんじゃないの?」
「あ……」
元気で活発な悟とは対照的に冷静に状況を判断して悟の過ちを指摘したのは
礼に指摘された悟は顔を真っ青にして路地の方に振り向いて戻ろうとしたが、そこには両腕を組んで満面な笑みで悟を見るあかりの姿とその様子に戸惑いの表情を見せる宇野さんがいた。
優の休憩所 時雨白 @sigure1226
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